「下町長屋エリアの共有排水管」が発覚した古家の買取事例
東京の下町エリアで頻発する「家と家の間を縦断する共有排水管」のリスクを、ホームワーク社の現場経験から整理。長屋が個別の戸建てに分かれた後も地中の配管はそのまま残り、建て替え時に隣家の協力なしでは修繕できない問題に直面します。墨田・台東・荒川・葛飾の古い住宅街で売却を検討する方への注意点をまとめました。
2026年6月4日
概要
築古の家屋を相続したり、長屋形式の建物を建て替えようとした時に、思わぬ問題が発覚することがあります。 敷地の地中で、隣の家と排水管を共有している というケースです。
今回ご紹介するのは、東京の下町エリアでしばしば見られる、共有配管という見えないリスクの話です。下町エリアで多数の取扱経験を持つホームワーク社にお話を伺いました。
物件概要
- 想定エリア: 東京都 墨田区・台東区・荒川区・葛飾区などの下町エリア
- 物件種別: 築古戸建て(長屋形式から分離された区画を含む)
- 特殊事情: 家と家の間を縦断する共有排水管が残存
- 典型的な発覚タイミング: 建て替え時の解体・基礎工事
なぜ家と家の間に下水管が通っているのか
普通に考えれば、各戸の下水管は道路の本管に向かって最短ルートで引き込まれているはずです。表通りに面した家であれば、表の道路の下を通る本管に繋がっているのが自然です。
ところが、下町エリアの古い住宅街では、 家と家の間を縦断するように下水管が通っている ケースが少なくありません。
ホームワーク社の説明はこうでした。昔の長屋のように家が連なっていた時代は、家と家の間に下水管を通し、排水を共有していました。表に道路があるにも関わらず、裏の家との間を共有管としてずっと排水していた、というのです。
つまり、複数の家屋が 一本の排水管を共有 している。それぞれの家から出る生活排水が、家と家の間を通る共有管に合流し、まとめて流れていくという構造です。
修繕しようとすると全戸の使用停止が必要
この構造の何が厄介か。
配管を直そうとすると、共有している全戸の排水を止める必要がある のです。
長屋時代であれば、一棟全体が同じ所有者で、住人同士の関係も近かったため、こうした共有も成立していました。修繕も全戸まとめて行えました。
しかし時代が下って、長屋が取り壊されて個別の戸建てに建て替えられたり、相続で所有者が分かれたりすると、状況が一変します。
ある一戸が配管トラブルを起こしても、修理するには共有している複数の所有者全員の協力が必要になる。「うちは関係ない」と言われたら、修理が進まない。
ホームワーク社も、関係する複数の家の排水をいったん止めて、ピンポイントで修繕する段取りが結構大変だと話していました。
建て替え時に発覚する
このリスクが表面化するタイミングは、たいてい 建て替え時 です。
一筆の土地が相続で複数に分かれ、それぞれの所有者が「親から相続した土地に家を建て替えよう」と動き出した時。あるいは、長屋を取り壊して複数の戸建てに分けて売ろうとした時。
解体工事や基礎工事の段階で、地中の共有配管が見つかります。
長屋として最初は土地も一筆だったものが、相続で分かれ、長屋を壊して家を4軒建てようとしたら下水管が走っていた——ホームワーク社の口ぶりからも、これがどれほど厄介な発見かが伝わってきます。
建て替えに伴う配管整理
共有排水管が見つかった場合、建て替えのタイミングで配管を整理することが多くなります。
具体的には、各戸が独立して本管に接続するルートに切り替える工事です。これにより、将来的に他の所有者と協議せずに自分の家の配管をメンテナンスできるようになります( 下水道法第10条 により、供用開始区域内の土地所有者には排水設備の設置義務がある。参考: 下水道法 e-Gov)。なお、 民法第220条・第221条(改正民法第213条の2・第213条の3) では、低地・高地間の余水排泄権・流水用工作物の使用権が定められており、他人の土地・排水施設の使用が必要な場合の調整ルールが整理されています。
ただし、この工事は簡単ではありません。
道路の本管までの距離があれば、それだけ工事費用がかかります。隣家の敷地を経由していた既存の配管は撤去または封鎖する必要があり、その作業にも隣家の協力が必要です。
下水管を直すのに、関係する家々の使用をいったん止めてもらう必要がある——というホームワーク社の表現は、この工事の段取りの大変さを表しています。
なぜ下町エリアに多いのか
共有排水管が下町エリアに多い理由は、街の成り立ちにあります。
東京の下町は、古くから人が密集して住んでいた地域です。江戸時代から続く街並みの上に明治・大正・昭和の住宅が重なるように建てられ、その多くが 長屋形式 でした。
長屋は、一棟の建物に複数の世帯が住む共同住宅です。今で言えば連棟住宅やテラスハウスに近いものですが、当時は所有形態も住み方ももっと一体的でした。
建物全体で水回りを共有し、排水も共有管で処理する。これは長屋の構造として自然な設計でした。
時代が変わり、長屋が個別の戸建てに建て替えられても、 地中の配管はそのまま残った 。これが現代に至るまでのリスクの根源です。
特に、 下町と呼ばれる墨田区・台東区・荒川区・葛飾区 などの古い住宅街では、こうした共有配管がいまだに残っているケースがあります。
売却時に発覚するとどうなるか
売却を検討している段階で、共有排水管の存在が分かるとは限りません。多くは買主側が解体・建て替えを進めた時に発覚します。
その場合、買主との間で 契約不適合責任 ( 民法第562条〜第564条 )が問題になる可能性があります。
「敷地に他人の排水管が通っている」「自分の排水管が他人の敷地を経由している」という状態は、買主からすれば想定外の負担です。建て替え時の追加工事費用、隣家との協議、工期の遅延——いずれも買主の負担になります。
売主が事前に知らなかったとしても、買主から「告知すべきだった」と主張される余地は残ります。
売主側の学び
下町エリアの古家や、長屋から戸建てに変わった区画を売却する方が押さえておきたいポイントを整理します。
ひとつ目は、自宅の排水経路を可能な範囲で確認すること 。古い家の場合、配管図が残っていないことも多いですが、市区町村の下水道台帳で本管位置と引き込み位置をある程度確認できます。完全には分からなくても、把握できる情報を整理しておくことが、買主との情報開示の出発点になります。
ふたつ目は、長屋から戸建てへの変遷を辿ること 。元々長屋だった敷地が分割されて戸建てになっている場合、共有配管が残っている可能性が高い。登記の沿革を見れば、土地が一筆だった時期があるかどうかが分かります。古い登記簿で確認しておくと、買主への説明材料になります。
みっつ目は、建て替え前提の買主に売る場合の契約条件を工夫すること 。買取再販業者に売る場合は、こうした地中の状況について売主側が保証できない旨を契約書に明記する。それを前提に価格と条件を組むことが、後のトラブル回避につながります。
よっつ目は、「下町だから安く買い叩かれる」とは限らないこと 。共有配管などのリスクがあっても、それを織り込んで取引できる業者は存在します。地域特性を理解した買取業者に相談することで、適正な価格での売却が可能です。むしろ、こうしたリスクを知らない業者に高く査定されても、契約直前に値下げ交渉が入る可能性があります。
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なないろ土地査定 パートナー企業について
| 社名 | ホームワーク株式会社 |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役 橋本 泰 |
| 免許番号 | 東京都知事(2)第100965号 |
| 設立 | 2017年7月 |
| 加盟団体 | 全日本不動産協会 / 不動産保証協会 / 東日本不動産流通機構 |
よくある質問
- Q. 隣家と排水管を共有しているとどんな問題が起きますか?
- A. 配管を直そうとすると、共有している全戸の排水を一時的に止める必要があります。長屋時代は所有者が同じで協議も容易でしたが、相続や建て替えで所有者が分かれた現在では、「うちは関係ない」と言われると修理が進まないケースがあります。
- Q. 共有排水管が多い地域はどこですか?
- A. 東京の下町エリア——墨田区・台東区・荒川区・葛飾区などの古い住宅街では、共有配管がいまだに残っているケースがあります。江戸時代から続く街並みに長屋が建てられ、長屋が個別戸建てに変わっても地中の配管はそのまま残ったことが背景です。
- Q. 共有排水管がある古家を売却する際、売主はどんな対策をすべきですか?
- A. 自宅の排水経路を市区町村の下水道台帳である程度確認し、把握できる情報を整理しておくことが出発点です。買主への情報開示の材料になります。また、買取再販業者に売る場合は、地中の状況について売主側が保証できない旨を契約書に明記する形で、リスクの線引きをしておくことが重要です。
- Q. 長屋から戸建てに変わった土地は売れにくいのでしょうか?
- A. そうとは限りません。共有配管などのリスクがあっても、それを織り込んで取引できる業者は存在します。地域特性を理解した買取業者に相談することで、適正な価格での売却が可能です。むしろリスクを知らない業者に高く査定されると、契約直前の値下げ交渉が入る可能性があります。