「境界未確定」の土地買取事例——筆界特定制度で隣地交渉を突破
境界確定を条件とした仕入れ案件で、隣地所有者が20センチの譲歩案にも応じなかったケース。「現況のまま買い受け、買取後に筆界特定制度で分筆まで進める」という提案で売主と合意し、決済まで到達した事例を、ホームワーク社の対応をもとに整理しました。
2026年5月27日
概要
土地の売却で意外と多いのが、 境界をめぐる隣地とのトラブル です。
「測量しようとしたら、隣の方が立ち会ってくれない」「境界の位置で主張が食い違っている」——こうした問題に直面すると、売却そのものが止まってしまいます。
今回ご紹介するのは、境界確定が条件だった仕入れ案件で、隣地所有者との合意が取れず、最終的に 筆界特定制度 という手続きで突破したケースです。取り扱ったホームワーク社にお話を伺いました。

物件概要
- 物件種別: 土地(分譲事業向け仕入れ案件)
- 特殊事情: 境界未確定、隣地所有者が押印拒否
- 解決手段: 現況のまま買取+買取後の筆界特定制度活用
- 状況: 決済完了、筆界特定手続きを進行中
境界確定を条件とした仕入れ契約
きっかけは、ある土地を仕入れる際の契約条件でした。
土地を仕入れて分譲を行う事業の場合、土地を分けて売る(分筆する)必要があります。分筆をするためには、隣地との境界が確定していなければなりません。そこで「境界確定を条件に仕入れる」という契約形態が一般的に使われます。
ところが今回、隣地所有者の一人が 境界の位置に異議 を唱えました。「境界は今の位置ではなく、20センチほど内側だ」というのです。
ホームワーク社と売主側で話し合った結果、「分筆さえできれば事業は進むので、20センチ譲歩した位置で確定させましょう」という提案にまで踏み込みました。本来あるべき境界位置から自分たちが20センチ引き下がる形での妥協案です。
それでも、隣地所有者は書類への押印を拒否しました。
「過去のいきさつ」が境界を止める
ここが境界トラブルの難しいところです。
ホームワーク社の経験では、 8割の案件は円滑にまとまる といいます。境界の話し合いそのものは、隣地所有者と良好な関係があれば、それほど大きな問題にはなりません。
問題は残りの2割です。さらにそのうちの一部、確率にして 5%前後 で、どうしても合意に至らないケースが出てきます。
理由は境界の位置そのものではないことがほとんどです。過去の何かしらのトラブル、先代同士のいざこざ、境界ブロックを建てた時のやり取り——こうした 人間関係の経緯 が、境界の話を硬直させてしまう。境界の位置を譲歩しても押印してもらえないのはそのためです。
1〜2ヶ月交渉を続けても応じる気配がない。そうなったとき、事業は止まります。
筆界特定制度という選択肢
そこでホームワーク社が提案したのが、 筆界特定制度 でした。
筆界特定制度は、法務局が土地の境界を行政手続きとして特定する仕組みで、 不動産登記法第123条以下 に規定されています(参考: 法務省「筆界特定制度」)。隣地所有者の同意が得られなくても、法務局の判断によって境界の位置を確定させることができます。
裁判ではないため判決のような強制力はありませんが、登記の現場では境界の根拠として扱われ、分筆登記が可能になります。
つまり、 隣地所有者の協力が得られなくても、土地を分けて売る道筋が残されている ということです。
ただし、この制度にはコストと時間がかかります。
1年と100万円という現実
筆界特定制度を利用すると、手続き完了までおおむね 1年程度 かかります(東京法務局の標準処理期間は約9ヶ月)。さらに、 測量費用として100万円前後 が別途必要になります(東京法務局では概ね50万〜80万円が多いとされるが、案件の難易度で大きく変動。参考: 東京法務局「筆界特定制度に関するよくある質問」)。これに 不動産登記法第131条第3項 に基づく申請手数料が加わります。
これだけの負担を考えると、最初から選ぶ手段ではありません。隣地との合意で済むなら、それに越したことはない。
今回のケースでは、ホームワーク社からこの提案を売主側に持ちかけました。分筆さえできればいいので現況のままで買い受け、買った後に自社で筆界特定制度を進める。その分だけ売買価格を減額させてほしい、という申し入れです。
売主側もこの提案を受け入れ、無事に決済が完了。現在、ホームワーク社で筆界特定の手続きを進行中とのことです。
なぜこの提案が成立したか
この事例で注目すべきは、ホームワーク社が 現況のまま買い受ける という判断をした点です。
通常、境界が未確定の土地を買い取るのはリスクが大きい。境界が確定するまで分筆登記ができず、分譲事業が動かないからです。
それでも今回成立したのは、ホームワーク社が「筆界特定制度を使ってでも分筆まで持っていく」という覚悟と、その費用と時間を価格に反映させる柔軟性を持っていたからでした。
売主側からすれば、価格は多少下がるものの、 確実に手放せる ことのほうが大きな価値だったのです。境界トラブルを抱えたまま自分で1年がかりの手続きを進めるのは、現実的に難しい話です。
境界が確定しなくても売れるケース
ここで一つ重要な視点があります。
すべての売却で境界確定が必須というわけではありません。
たとえば、戸建ての建て替えを目的とした分譲計画であれば、確定測量は絶対条件ではありません。建物を建てるだけなら、ある程度の境界の認識があれば工事は進められます。買主側もそのリスクを織り込んで取引できる場合があります。
確定測量が必須になるのは、 分筆を伴う事業 ——つまり一つの土地を複数に分けて売るケースです。
このため、ホームワーク社でも案件ごとに「境界確定が必須か、柔軟に対応できるか」を判断しながら進めています。一律に「境界が確定していないから売れない」というわけではありません。
売主側の学び
境界に不安を抱えている方が押さえておきたいポイントを整理します。
ひとつ目は、隣地との関係性が境界の話を左右するということ 。境界の位置そのものよりも、過去のいきさつのほうが交渉の難易度を決めます。普段からの関係づくりが、いざという時に効いてきます。
ふたつ目は、筆界特定制度という選択肢があることを知っておくこと 。隣地所有者の同意が得られなくても、法務局の手続きで境界を特定する道があります。ただし1年・100万円前後のコストがかかるため、最初から選ぶ手段ではありません。
みっつ目は、業者の提案力を見ること 。今回のように「現況のまま買い受けて、こちらで筆界特定まで進める」という提案ができる業者は限られます。境界トラブルを抱えた土地ほど、提案の引き出しを持っている業者を選ぶことが、売却の成否を分けます。
よっつ目は、境界未確定=売れない、ではないこと 。買主側の事業内容によっては、確定測量なしでも取引が成立します。「境界が決まらないから売れない」と諦める前に、別の出口がないか業者と相談する価値があります。
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なないろ土地査定 パートナー企業について
| 社名 | ホームワーク株式会社 |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役 橋本 泰 |
| 免許番号 | 東京都知事(2)第100965号 |
| 設立 | 2017年7月 |
| 加盟団体 | 全日本不動産協会 / 不動産保証協会 / 東日本不動産流通機構 |
よくある質問
- Q. 隣地所有者が境界確認に応じてくれない場合、土地は売却できないのですか?
- A. いいえ、売却の道は残ります。法務局が行政手続きで境界を特定する「筆界特定制度」を使えば、隣地所有者の同意なしでも境界を確定させ、分筆登記まで進めることが可能です。買主側が筆界特定の負担を引き受ける形で買い取るケースもあります。
- Q. 筆界特定制度とは何ですか?
- A. 法務局が土地の境界(筆界)を行政手続きとして特定する仕組みです。裁判のような強制力はありませんが、登記の現場では境界の根拠として扱われ、分筆登記が可能になります。隣地所有者の協力が得られなくても土地を分けて売る道筋が残されているのが大きな特徴です。
- Q. 筆界特定制度にはどのくらいの費用と時間がかかりますか?
- A. 手続き完了までおおむね1年程度、測量費用として100万円前後が別途必要になります。隣地との合意で済むならそれに越したことはなく、最初から選ぶ手段ではありません。
- Q. 境界が確定していない土地でも売却できるケースはありますか?
- A. はい、すべての売却で境界確定が必須というわけではありません。戸建ての建て替えを目的とした取引であれば、確定測量は絶対条件ではなく、ある程度の境界認識があれば工事は進められます。確定測量が必須になるのは、一つの土地を複数に分けて売る「分筆を伴う事業」が中心です。