境界確定の費用と方法|測量費用の相場
この記事でわかること
Q. 境界確定測量の費用はどれくらいかかりますか?
Q. 「筆界」と「所有権界」の違いは何ですか?
Q. 隣接地主の同意が得られない場合はどうすればいいですか?
Q. 境界確定の流れはどのようなものですか?
境界確定とは
境界確定とは、隣接する土地との境界線を測量によって明確にし、関係者全員が合意のうえ書面で確認する手続きです。
国土交通省の地籍調査によると、全国の地籍調査進捗率は53%にとどまり、都市部(人口集中地区)では30%程度です。つまり都市部の土地の約7割は公的な境界確認が完了しておらず、売買や建築の際に境界確定が必要になるケースは珍しくありません。
「筆界」と「所有権界」の違い
境界確定を理解するうえで重要なのが、 「筆界」と「所有権界」の違いです。
筆界とは、不動産登記法第123条で定義される「表題登記がある一筆の土地とこれに隣接する他の土地との間において、当該一筆の土地が登記された時にその境を構成するものとされた二以上の点及びこれらを結ぶ直線」のことです。筆界は登記によって公法上定められた境界であり、隣接地主同士の合意だけでは変更できません。
一方、 所有権界は実際の利用状況や当事者間の合意に基づく私法上の境界です。たとえば「ここまでがうちの土地」と長年認識してきた範囲が、登記上の筆界とずれていることがあります。筆界と所有権界が一致しない場合にトラブルが起こりやすく、境界確定ではまず筆界を正確に把握することが出発点になります。
境界確定の種類
| 種類 | 内容 | 効力 |
|---|---|---|
| 民民境界 | 隣接する民有地との境界確認 | 当事者間の合意 |
| 官民境界 | 道路など公有地との境界確認 | 公的効力 |
| 筆界確認 | 隣接地主と筆界確認書を取り交わす | 当事者間の合意 |
| 筆界特定 | 法務局の筆界特定登記官が筆界を特定 | 法的効力(不動産登記法第131条〜第146条) |
境界未確定の土地の売却や境界トラブルの対処法についても別記事で解説しています。

境界確定の費用
測量費用の相場
境界確定測量の費用は、測量の種類と範囲によって大きく異なります。以下は日本土地家屋調査士会連合会の業務報酬統計資料を参考にした相場の目安です。
| 測量の種類 | 費用目安 | 内容 |
|---|---|---|
| 現況測量 | 10〜30万円 | 現地の状況をそのまま測量。境界の確定は行わない |
| 境界確定測量 | 30〜80万円 | 隣接地主との立会いを経て民民境界を確定 |
| 確定測量(官民含む) | 50〜100万円 | 民民境界に加え、道路等の公有地との官民境界も確定 |
費用に幅があるのは、土地の広さ・形状・隣接地の数・地域によって作業量が大きく変わるためです。都市部では隣接地が多い傾向があり、費用が高くなりやすくなります。
費用に影響する要因
| 要因 | 費用が上がるケース | 費用を抑えられるケース |
|---|---|---|
| 土地の広さ | 広い(測量範囲が増える) | 狭い |
| 形状 | 複雑・不整形(境界点が多い) | 整形 |
| 隣接地の数 | 多い(立会い回数が増える) | 少ない |
| 官民境界 | あり(行政との協議が必要) | なし |
| 立会いの難易度 | 隣接地主と連絡がつきにくい | スムーズに連絡がとれる |
費用の内訳
| 項目 | 費用目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 測量作業 | 15〜40万円 | 現地での測量・データ処理 |
| 境界立会い | 5〜15万円 | 隣接地主との日程調整・現地立会い |
| 図面作成 | 5〜10万円 | 地積測量図の作成 |
| 法務局申請 | 3〜5万円 | 登記申請の手続き代行 |
| 交通費等 | 実費 | 遠方の場合は加算 |
境界標の設置費用
境界確定後は境界点に境界標を設置します。民法第223条は「土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる」と定めており、同第224条で設置費用は等分(測量費用は面積に応じて按分)と規定されています。
| 種類 | 特徴 | 費用(1本あたり) |
|---|---|---|
| コンクリート杭 | 最も一般的。耐久性が高い | 3,000〜5,000円 |
| 金属プレート | コンクリート面に埋め込む | 3,000〜5,000円 |
| 金属鋲 | アスファルト面に設置 | 2,000〜3,000円 |
| 木杭 | 仮の境界標として使用 | 1,000〜2,000円 |
境界標の設置費用は測量費用に含まれることが多いですが、事前に土地家屋調査士へ確認しておくと安心です。
参考: 民法(e-Gov法令検索)
境界確定の流れ
境界確定測量は通常1〜3ヶ月程度かかります。官民境界の確認が必要な場合は行政との協議に時間を要するため、さらに長期化することもあります。
ステップ1:土地家屋調査士への依頼
土地家屋調査士は、不動産の表示に関する登記の専門家です。境界確定測量は土地家屋調査士に依頼するのが一般的です。
探し方としては、不動産会社からの紹介のほか、日本土地家屋調査士会連合会のウェブサイトで全国の土地家屋調査士会から検索できます。複数の事務所に見積もりを取って比較すると、適正な費用を把握しやすくなります。
ステップ2:資料収集
依頼を受けた土地家屋調査士は、法務局や市区町村で以下の資料を収集します。
- 登記事項証明書(登記簿謄本): 土地の所有者・面積・地目等の登記情報
- 公図(法14条地図): 法務局に備え付けられた地図。法14条地図は精度が高いが、旧来の公図は精度が低い場合がある
- 地積測量図: 過去に測量が行われていれば法務局に保管されている
- 過去の測量図・境界確認書: 所有者が保管している場合がある
ステップ3:現地測量
資料を基に現地で測量を行います。境界杭の有無や塀・フェンスの位置、建物の配置などを実測し、既存の資料との整合性を確認します。
ステップ4:官民境界の確認
道路や水路など公有地と接している場合は、管理者である行政機関との境界確認が必要です。確認先は道路の種類によって異なります。
- 市区町村道: 市区町村の道路管理課
- 都道府県道: 都道府県の道路管理課
- 国道: 国道事務所
行政との協議は申請から回答まで1〜2ヶ月程度かかることが多く、境界確定全体の所要期間を左右する要因になります。
ステップ5:民民境界の立会い
隣接する民有地の所有者全員と現地で立ち会い、境界点を確認します。全員の合意が得られたら、 筆界確認書(境界確認書)に署名・捺印して境界を確定します。
立会いをスムーズに進めるには、事前に土地家屋調査士から隣接地主へ連絡してもらい、日程を十分調整することが大切です。境界標が残っている場合はそれを基準に確認し、境界標がない場合は測量結果と資料を照合しながら合意を目指します。
ステップ6:図面作成・登記
全ての境界が確定したら、土地家屋調査士が地積測量図を作成し、法務局に地積更正登記を申請します。これで境界確定の手続きは完了です。
隣接地主の同意が得られない場合
筆界特定制度
隣接地主と境界について合意できない場合、 筆界特定制度を利用できます。これは不動産登記法第131条〜第146条に規定された制度で、法務局の筆界特定登記官が外部専門家である筆界調査委員の意見を踏まえて筆界の位置を特定するものです。
筆界特定制度の特徴は以下のとおりです。
- 隣接地主の同意は不要: 一方の土地所有者が単独で申請できる
- 裁判より簡易・迅速: 境界確定訴訟(1〜3年)に比べ、6ヶ月〜1年程度で結論が出る
- 費用: 申請手数料は土地の価格で決まる(例: 対象地の合計額4,000万円の場合、申請手数料8,000円)。別途、測量費用の予納が必要
- 注意点: 筆界特定はあくまで「筆界」を特定するもので、「所有権界」を確定するものではない。所有権の範囲を争う場合は別途訴訟が必要
参考: 法務省「筆界特定制度」 / 法務局「筆界特定手続の流れ」
その他の解決方法
筆界特定制度のほかにも、以下の方法があります。
- 再度の交渉: 時間をおいて改めて説明し、理解を求める
- ADR(裁判外紛争解決): 各地の土地家屋調査士会が運営する境界問題相談センターでの調停
- 境界確定訴訟: 最終手段として裁判所に訴訟を提起する。費用は数十万円〜、期間は1〜3年
境界確定の必要性
必要性が高いケース
以下のケースでは境界確定測量を行うことを強く推奨します。
- 住宅ローンを利用する売却: 金融機関が境界確定を求めることが多い
- 分筆して売却: 分筆登記には地積測量図が必須
- 建築確認申請: 敷地面積の確定が必要
- 相続税の土地評価: 正確な面積が評価額に直結する
必要性が低いケース
一方、以下のケースでは境界確定を省略できることがあります。
- 買取業者への売却: 買取業者が境界未確定のまま買い取り、費用を負担して自ら境界確定を行うケースがある
- 概算面積での売買: 当事者間で面積の多少の差異を容認する契約(公簿売買)の場合
- 現況のまま売却: 境界未確定であることを買主が了承のうえ、価格に反映する場合
費用対効果の判断
境界確定にかかる費用と、確定による売却価格の上昇を比較して判断することが重要です。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 境界確定費用 | 50万円 |
| 確定後の売却価格 | 2,000万円 |
| 未確定での売却価格 | 1,900万円 |
| 差額(費用控除後) | +50万円 |
この例では境界確定費用50万円を差し引いても50万円のプラスとなり、境界確定をした方が有利です。ただし実際の価格差は土地の条件や市場環境によって異なるため、不動産会社や土地家屋調査士に相談したうえで判断してください。
まとめ
境界確定は土地の売却や建築を進めるうえで避けて通れない手続きです。とくに都市部では地籍調査の進捗率が低く、境界が未確定のまま残っている土地が多い現状があります。
費用は現況測量で10〜30万円、境界確定測量で30〜80万円が目安です。隣接地主の同意が得られない場合は、筆界特定制度(不動産登記法第131条〜第146条)を利用することで隣接地主の同意なく筆界を特定できます。
境界確定の費用対効果を判断したうえで、早めに土地家屋調査士へ相談することをおすすめします。各地の土地家屋調査士会では無料相談を受け付けています。
費用対効果を踏まえて「確定せず売却」と判断する場合の具体的な方法と価格目安(境界明確時に比べて5〜10%減、トラブル時20〜30%減が相場)は「境界未確定の土地の売却」、基本的な仕組みや対処法は「境界未確定の土地について」で解説しています。
なお、測量費用をかけてから売るか、境界が未確定のまま売るかは、土地の価格帯によって答えが変わります。 確定測量に30〜80万円かかる一方、境界未確定による減価が5〜10%であれば、土地の価格が低いほど「測量したほうが損」になる領域が出てきます。隣地所有者と連絡が取れない、相続で共有者が増えて同意を集められない、といった事情があると、費用以前に手続きが進みません。
当社は 境界が未確定のままの土地も、現況で買取の対象にしています。 「まず測量してから相談する」必要はありません。測量にいくらかかるか分からない段階でも、未確定のままだといくらになるかをお伝えできますので、両方を比べてから決めていただけます。


