「埋蔵文化財包蔵地」「事故物件」が重なった相続土地の買取事例
神奈川県相模原市の相続土地。文化財保護法第93条の埋蔵文化財包蔵地に該当し、契約直前に事故物件であることも判明した複合案件です。周辺30件の事例調査で出土傾向を読み、白紙解約条項など契約条件を工夫することで、査定から約1ヶ月での契約成立に向けて最終調整中の事例をご紹介します。
2026年5月19日
物件概要
- 所在地: 神奈川県相模原市
- 物件種別: 土地(相続物件)
- 特殊事情: 埋蔵文化財包蔵地(出土可能性が高めの地点)、事故物件(前所有者の自宅内死亡)
- 査定〜契約: 約1ヶ月(最終調整中)
「相続した土地を売りたい」「役所で調べたら埋蔵文化財包蔵地と言われた」——こうした相談は珍しくありません。さらにそこに別の事情が重なると、取引はぐっと複雑になります。
今回ご紹介するのは、相模原エリアで実際に進んでいる案件です。取り扱ったホームワーク社にお話を伺いました。
入り口は「相続物件の買取」だった
最初の話は、不動産会社から持ち込まれた相続案件でした。仲介業者が買い取り、整備したうえで再販する、いわゆる買取再販の入り口です。
調査を進めるうちに最初に浮上したのが、その土地が 埋蔵文化財包蔵地 に該当しているという事実でした。
埋蔵文化財包蔵地とは、地中に遺跡や遺物が眠っている可能性があるとして、自治体が指定しているエリアのこと。 文化財保護法第93条 により、包蔵地内で土木工事などを行う場合は、工事着手の60日前までに都道府県等の教育委員会への届出が義務付けられています(参考: 文化庁「埋蔵文化財」)。届出の結果、必要に応じて試掘調査や本調査が指示されます。
しかも今回は、対象エリアの中でも出土の可能性が高めとされる地点でした。
「試掘」と「本調査」の違い
埋蔵文化財と聞くと、「掘ったら必ず工事が止まる」というイメージを持たれるかもしれませんが、実際の流れはこうです。
まず 試掘 を行います。これは「本当に何か出るのか」を確認する、いわば下見の調査です。試掘で何も出なければ、そのまま工事に進めます。
問題は、試掘で何か出てしまった場合です。次は 本調査 に進みます。土器や「はじき」と呼ばれる素焼きの土器片などが出てきた場合、それらを記録に残す作業が必要になります。重要なものでなければ最終的に取り壊して工事を続けられるのですが、その判断と記録作業に時間がかかります。
本調査が入ると、 下手をすると1〜2年も工事が止まる ことがあります。業界では本調査の影響で事業そのものが中止に追い込まれた事例もあるほどで、開発側にとって最も警戒する事象のひとつです。
役所の判断だけでは足りない
ここからが現場の知恵です。
埋蔵文化財包蔵地は、エリア全体が一律に「危険」というわけではありません。同じエリアでも、北側はよく出るが南側はあまり出ない、西側は少なめ——というように、出土の濃淡があります。
そこでホームワーク社が行ったのは、 周辺30件ほどの事例調査 でした。役所の判断だけに頼らず、近隣で実際に何が出ているかを自分の足で確認しに行く方針です。
役所に問い合わせるだけでは「このエリアは出る可能性があります」という一般論しか返ってきません。実際の周辺事例を一件ずつ確認していくと、出土傾向の輪郭が見えてきます。
この30件の調査結果から、「試掘はあるが、本調査までは進まない可能性が高い」と判断できたといいます。
最後の最後で出てきた「もう一つの事実」
ここまでで十分に重い案件ですが、契約間際になってもう一つの事実が浮上します。
その土地は 事故物件 でもあったのです。
前の所有者の方が自宅で亡くなられた、いわゆる心理的瑕疵のある物件でした。売主側との情報共有がうまく取れていなかったようで、契約直前のタイミングで判明したといいます。
なお、売買取引における人の死に関する告知義務は、 国土交通省「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」(2021年10月公表) で実務基準が整理されています。賃貸取引で「概ね3年」とされているのに対し、 売買取引については告知期間に明確な上限が設けられていない のが特徴です(参考: 国土交通省 関連資料)。詳しくは 事故物件の告知義務 を参照してください。
通常、こうした事実が後から発覚すると、買主側は条件の見直しを求めるのが自然な流れです。場合によっては契約自体が流れます。

「重い土地」をどう契約に落とすか
それでも、リスクが消えるわけではありません。万が一、本調査に進んでしまえば1〜2年の塩漬けになります。仲介業者が買い取った土地を、そんなに長期間保有し続けるのは現実的ではありません。
そこで設計したのが、 契約条件の工夫 でした。
- 一定の事象が発生した場合の白紙解約条項
- 調査結果を停止条件とする条項
- 解体は売主側で実施(埋蔵文化財調査は更地が前提のため)
金額そのものよりも条件面をシビアに設計する必要があり、買主・売主・仲介の三者で何度も協議を重ねたといいます。事故物件であることが判明した後も、ホームワーク社は契約から降りずに条件を組み直して取引を進めました。査定から契約まで約1ヶ月、月内の契約に向けて最終調整中とのことです。
査定の早さと契約までの時間は別物
この案件で印象的だったのは、査定そのものは早かったという点です。軽く査定するだけなら長くても1週間あれば金額は出せる。ただ今回は、契約条件を細かく詰める作業に時間がかかった、というのがホームワーク社の振り返りでした。
他社にも声はかかっていたそうですが、最終的にホームワーク社に依頼が集まった理由は「条件設計と取り組み姿勢」。価格だけでなく、リスクをどう契約に織り込むかという提案力が決め手になったといいます。
売主側の学び
この事例から、売却を検討している方が押さえておきたいポイントを整理します。
ひとつ目は、土地の履歴や事情を売主自身が最初から開示すること 。今回のように、事故物件である事実が共有されていなかったケースでは、調査の最終盤で発覚し、条件交渉が複雑になります。最初から開示されていれば、もっとスムーズに進んだはずです。買主側にとっても、後から出てくる事実は警戒対象になります。
ふたつ目は、複数の難条件が重なっている土地ほど、業者選びが結果を左右するということ 。金額だけで比較すると、リスクを甘く見積もった業者の高い査定に引き寄せられがちです。しかしそうした業者は、契約直前に値下げを持ち込むか、白紙撤回するかのどちらかになりやすい。条件設計まで含めて提案してくれる業者かどうかを見極めることが、結果的に取引を成立させる近道です。
みっつ目は、埋蔵文化財包蔵地は「該当=売れない」ではないということ 。出土の濃淡を周辺事例で読み解き、契約条件で時間軸のリスクを設計できれば、取引は十分に成立します。役所のホームページで「包蔵地」と表示されただけで諦める必要はありません。
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なないろ土地査定 パートナー企業について
| 社名 | ホームワーク株式会社 |
|---|---|
| 代表者 | 代表取締役 橋本 泰 |
| 免許番号 | 東京都知事(2)第100965号 |
| 設立 | 2017年7月 |
| 加盟団体 | 全日本不動産協会 / 不動産保証協会 / 東日本不動産流通機構 |
よくある質問
- Q. 埋蔵文化財包蔵地に指定されている土地は売却できないのですか?
- A. 「該当=売れない」ではありません。包蔵地のエリア内でも出土の濃淡があり、周辺の事例調査で出土傾向の輪郭が見えてきます。今回の事例では周辺30件ほどの事例を確認し、試掘はあるが本調査までは進まない可能性が高いと判断したうえで、契約条件にリスクを織り込んで取引を進めています。
- Q. 試掘と本調査の違いは何ですか?
- A. 試掘は「本当に何か出るのか」を確認する下見の調査です。試掘で何も出なければ、そのまま工事に進めます。問題は試掘で出てしまった場合で、次は本調査に進み、土器などを記録に残す作業が必要になります。本調査が入ると、下手をすると1〜2年も工事が止まることがあります。
- Q. 事故物件と埋蔵文化財包蔵地のように複数の事情が重なっている土地でも買取してもらえますか?
- A. はい、対応可能です。複数の難条件が重なっている土地ほど、金額そのものより契約条件をシビアに設計する必要があります。今回の事例では、白紙解約条項や調査結果を停止条件とする条項などを組み合わせて、買主・売主・仲介の三者で契約条件を詰めました。
- Q. 売主として、埋蔵文化財包蔵地の土地を売る際に気をつけることは何ですか?
- A. 土地の履歴や事情は売主自身が最初から開示することが重要です。事故物件である事実などが調査の最終盤で発覚すると、条件交渉が複雑になります。また、金額だけで業者を比較すると、リスクを甘く見積もった業者の高い査定に引き寄せられがちですが、契約直前に値下げを持ち込まれたり白紙撤回されたりするリスクがあります。条件設計まで含めて提案してくれる業者を選ぶことが大切です。