旧耐震マンションが売れない理由と売却方法|ローン審査落ちの対策
この記事でわかること
Q. 旧耐震マンションで住宅ローンが使えない理由は?
Q. 旧耐震マンションの売却価格はどれくらい下がりますか?
Q. 旧耐震マンションで住宅ローンを使えるようにする方法は?
Q. 旧耐震マンションの建替えは簡単にできますか?
旧耐震マンションの現状
国土交通省のマンションに関する統計によると、全国の分譲マンションストック数は約704万戸(2023年末時点)で、そのうち1981年(昭和56年)の新耐震基準施行以前に建てられた旧耐震マンションは約106万戸にのぼります。
旧耐震マンションは2026年時点で築45年以上が経過しており、構造の老朽化や設備の劣化が進んでいます。とくに修繕積立金が不足しているケースや、管理組合の運営が停滞しているケースが目立ち、売却を検討する所有者が増えています。
| 項目 | 旧耐震マンションの特徴 |
|---|---|
| 築年数 | 45年以上(2026年時点) |
| 構造 | RC造が多い |
| 管理状況 | 老朽化が進み、大規模修繕の実施が課題 |
| 修繕積立金 | 長期修繕計画の見直しが追いつかず不足気味 |
住宅ローンが使えない理由
旧耐震マンションが売れにくい最大の原因は、買主が住宅ローンを利用できないことです。
金融機関の審査基準
多くの金融機関は、旧耐震マンションへの融資を敬遠します。地震による倒壊リスクや担保価値の低さに加え、将来の資産価値下落を懸念するためです。メガバンクでは原則として融資不可、地方銀行でも個別審査で条件が厳しくなるのが一般的です。
| 金融機関の種類 | 旧耐震マンションへの融資姿勢 |
|---|---|
| メガバンク | 原則として融資不可 |
| 地方銀行 | 個別審査。融資期間の短縮や金利上乗せの条件付き |
| 信用金庫 | 比較的柔軟だが金利上乗せが多い |
| フラット35 | 耐震基準適合証明書があれば利用可能 |
フラット35の技術基準
住宅金融支援機構が提供するフラット35は、建築確認日が1981年5月31日以前の住宅に対して「耐震性に関する基準」を適用します。この基準を満たすには、耐震診断で現行の建築基準法と同等の耐震性が確認されていること(耐震基準適合証明書の取得)が必要です。
つまり、旧耐震マンションでフラット35を利用するには管理組合レベルでの耐震診断が前提となり、区分所有者個人の努力だけでは対応できません。
住宅ローン控除の要件
住宅ローン控除(租税特別措置法第41条)を受けるには、以下のいずれかを満たす必要があります。
- 1982年(昭和57年)1月1日以降に建築された住宅であること(登記簿上の建築日付で判定)
- 耐震基準適合証明書を取得していること
- 既存住宅売買瑕疵保険に加入していること
- 登録住宅性能評価書で耐震等級1以上と評価されていること
旧耐震マンションはこれらの要件を満たさない限り、住宅ローン控除が利用できません。買主にとっては数百万円の税制メリットを逃すことになり、購入意欲が大きく低下します。
買主への影響
現金購入に限られる
住宅ローンが使えないと、買主は全額を現金で用意する必要があります。住宅購入者の大多数はローンを利用するため、現金購入層は投資家や買取業者が中心となり、購入候補者が大幅に減少します。
結果として、売却期間が長期化しやすく、価格交渉でも買主側が有利な立場になりがちです。
税制優遇が受けられない
旧耐震マンションでは以下の税制優遇が原則として利用できません。
| 優遇制度 | 旧耐震の場合 | 根拠法令 |
|---|---|---|
| 住宅ローン控除 | 原則利用不可 | 租税特別措置法第41条 |
| 登録免許税の軽減 | 原則利用不可 | 租税特別措置法第72条 |
| 不動産取得税の軽減 | 原則利用不可 | 地方税法第73条の14 |
| 贈与税の非課税措置 | 原則利用不可 | 租税特別措置法第70条の2 |
いずれも耐震基準適合証明書等を取得すれば適用可能ですが、マンション全体での対応が必要なため、個人で解決するのは難しい状況です。
売却価格への影響
価格下落の目安
旧耐震マンションは、同条件の新耐震マンションに比べて20〜40%程度安くなる傾向があります。
| 条件 | 新耐震マンション | 旧耐震マンション |
|---|---|---|
| 売却価格の例 | 3,000万円 | 1,800〜2,400万円 |
| 価格差 | — | 20〜40%安 |
ただし、都心の駅近物件など立地条件が優れている場合は値下がり幅が小さく、逆に郊外で管理状態が悪い場合はさらに下がる可能性があります。戸建を含めた一般的な相場は「旧耐震物件の買取相場」で詳しく解説しています。
価格に影響する要因
| 要因 | プラス要因 | マイナス要因 |
|---|---|---|
| 立地 | 駅近・都心(住宅ローン不要の現金買い手が多い) | 郊外(需要が少ない) |
| 管理状態 | 大規模修繕実施済み・管理良好 | 修繕未実施・管理不良 |
| 耐震補強 | 補強工事済み・適合証明書あり | 未実施 |
| 修繕積立金 | 残高が十分で長期修繕計画あり | 不足・滞納あり |

売却の選択肢
選択肢1:現況のまま売却
旧耐震のまま一般市場で売り出す方法です。費用がかからずすぐに売り出せる反面、住宅ローンが使えないため買主が現金購入できる投資家やリノベーション前提の買主に限られます。売却期間が長期化しやすく、価格も安くなる傾向があります。
選択肢2:耐震基準適合証明書を取得して売却
マンション全体で耐震診断を実施し、基準を満たせば耐震基準適合証明書を取得できます。証明書があれば住宅ローンや税制優遇が利用可能になり、買主の幅が広がります。
ただし、管理組合での合意形成が必要で、耐震診断の費用(マンション全体で数百万円〜)と、基準を満たさない場合の耐震補強費用(数千万円〜、規模による)が発生します。区分所有者個人では対応できないため、管理組合の理事会に提案するところから始める必要があります。
選択肢3:買取業者への売却
旧耐震マンションを扱う買取業者に直接売却する方法です。現況のままスピーディーに売却でき、契約不適合責任も免責されるケースが多い点がメリットです。相場より安くなる傾向がありますが、確実に売却できる安心感があります。
実際に旧耐震物件を買取業者が取得し、適切なリフォームで再生した事例もあります。
- 旧耐震ビルの買取事例 — 買取後4年以上安定運営
- 空室21戸の旧耐震マンション — 大規模リフォームで1年で満室に
- 旧耐震借地権アパート — リフォーム後6年以上満室維持
選択肢4:賃貸として運用後売却
賃貸に出して家賃収入を得ながら、収益物件(オーナーチェンジ物件)として投資家に売却する方法です。入居者がいる状態のほうが投資家にとっては利回りが見えやすく、売却しやすいケースがあります。一方で、賃借人の管理や空室リスクを負う必要があり、即時売却には向きません。
住宅ローンを使えるようにする方法
方法1:耐震基準適合証明書の取得
マンション全体で耐震診断を行い、現行の建築基準法と同等の耐震性(上部構造評点1.0以上)が確認されれば、耐震基準適合証明書が取得できます。
- 管理組合での合意形成: 理事会に提案し、総会決議を経る
- 耐震診断の実施: 耐震診断費用はマンション全体で数百万円〜(規模・戸数による)
- 必要に応じて耐震補強: 基準未達の場合、補強工事費用は数千万円〜
- 証明書の発行: 建築士が発行。有効期限は発行日から2年以内
方法2:既存住宅売買瑕疵保険の付保
既存住宅売買瑕疵保険に加入することで、住宅ローン控除等の税制優遇が利用できる場合があります。専有部分と共用部分の検査に合格する必要がありますが、旧耐震マンションでは共用部分の検査基準を満たせないケースもあるため、事前に保険法人へ相談してください。
方法3:融資可能な金融機関を探す
一部の信用金庫や地方銀行では、旧耐震マンションでも立地条件や借入条件によって融資を行う場合があります。頭金を多く入れる、借入期間を短くする(15〜20年程度)、金利が上乗せされるなどの条件がつくことが一般的です。
売却時の注意点
管理組合の状況確認
買主や買取業者は管理状況を重視します。売却前に以下の情報を整理しておくと、スムーズに進みます。
- 長期修繕計画の有無と内容: 計画がない、または古い場合は不安材料になる
- 修繕積立金の残高: 残高が少ないと将来の一時金徴収リスクが懸念される
- 管理費・修繕積立金の滞納状況: マンション全体の滞納額が大きいと管理体制への不信感に
- 大規模修繕の実施履歴: 直近の実施時期と内容
建替え・解体の予定
マンションによっては建替えや解体の検討が進んでいる場合があります。区分所有法第62条により、建替え決議には区分所有者及び議決権の各5分の4以上の賛成が必要です。国土交通省の統計では、建替えが実現したマンションは全国で累計約300件にとどまっており、合意形成のハードルは非常に高いのが現状です。
建替え計画がある場合は売却タイミングに影響するため、管理組合の最新の動向を確認してください。
参考: 区分所有法(e-Gov法令検索)
重要事項説明
旧耐震であることは宅地建物取引業法第35条に基づく重要事項として説明が必要です。耐震診断の有無とその結果も説明事項に含まれるため、耐震診断を実施していない場合はその旨を買主に伝えることになります。
まとめ
旧耐震マンションは住宅ローンが通りにくいことが売却の最大の障壁です。全国約106万戸が該当し、築45年以上の老朽化も進んでいます。
売却価格は新耐震マンションより20〜40%安くなる傾向がありますが、立地条件や管理状態によって大きく変動します。耐震基準適合証明書を取得できれば住宅ローンや税制優遇が使えるようになりますが、管理組合レベルでの対応が必要で個人では難しいのが実情です。
住む予定がなく早期に売却したい場合は、買取業者への売却が確実な選択肢になります。
※本記事の情報は2026年4月時点のものです。金融機関の融資基準や税制は変更される場合がありますので、具体的な判断は不動産会社や税理士にご相談ください。
売却前に耐震診断を検討する場合は「耐震診断・耐震補強の費用」、旧耐震物件全般の売却方法は「旧耐震基準の建物は売れる?」をご覧ください。旧耐震物件の基本的な仕組みや対応方法の全体像は「旧耐震の売却・買取について」にまとめています。


