借地権の売却価格の相場|路線価からの計算方法
この記事でわかること
Q. 借地権の価格相場はどれくらい?
Q. 借地権価格の計算方法は?
Q. 借地権が売りにくい理由は?
Q. 路線価と実際の売却価格は一致しますか?
Q. 借地権は地主に売ると高くなりますか?
Q. 借地権の買取価格は仲介と比べてどれくらいですか?
Q. 借地権割合がそのまま売買価格になりますか?
借地権の価格相場
借地権付き建物を売却する際、最も気になるのが「いくらで売れるのか」です。借地権の価格は、一般的に 更地価格の50〜70%程度 とされています。ただし、これはあくまで目安であり、実際の売却価格は地主との関係や建物の状態など、さまざまな要因によって変動します。
売却の流れについては「借地権の売却の流れと地主の承諾を得るコツ」をご覧ください。
借地権価格の計算方法
借地権の価格を算出する基本的な計算式は以下のとおりです。
借地権価格 = 更地価格 × 借地権割合
借地権割合の確認方法
借地権割合は、国税庁の路線価図に記載されています。路線価図では、道路ごとに「路線価(千円/㎡単位)」と「借地権割合(アルファベット)」が表示されており、借地権割合は以下のように対応しています。
| 記号 | 借地権割合 | 主に該当する地域 |
|---|---|---|
| A | 90% | 都心の商業地 |
| B | 80% | 都心の住宅地 |
| C | 70% | 都市部の住宅地 |
| D | 60% | 市街地 |
| E | 50% | 郊外の住宅地 |
| F | 40% | 郊外 |
| G | 30% | 地方 |
都心部ほど借地権割合が高く、郊外になるほど低くなる傾向があります。なお、路線価が設定されていない地域では倍率方式で評価し、借地権割合は国税庁の「評価倍率表」で確認します。
具体的な計算例
例1:都心の借地権(借地権割合C=70%)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 土地面積 | 100㎡ |
| 路線価 | 50万円/㎡ |
| 更地価格 | 100㎡ × 50万円 = 5,000万円 |
| 借地権割合 | C(70%) |
| 借地権価格 | 5,000万円 × 70% = 3,500万円 |
例2:郊外の借地権(借地権割合E=50%)
| 項目 | 数値 |
|---|---|
| 土地面積 | 150㎡ |
| 路線価 | 15万円/㎡ |
| 更地価格 | 150㎡ × 15万円 = 2,250万円 |
| 借地権割合 | E(50%) |
| 借地権価格 | 2,250万円 × 50% = 1,125万円 |
建物の価値はどうなる?
借地権付き建物を売却する場合、売却価格は 借地権価格 + 建物価格 で構成されます。ただし、建物は築年数に応じて価値が下がり、法定耐用年数を超えると評価がほぼゼロになります。
| 構造 | 法定耐用年数 | 根拠 |
|---|---|---|
| 木造 | 22年 | 減価償却資産の耐用年数等に関する省令 別表第一 |
| 軽量鉄骨(3mm以下) | 19年 | 同上 |
| 重量鉄骨 | 34年 | 同上 |
| RC造 | 47年 | 同上 |
借地権上の建物は築年数が古いケースが多く、建物の価値はゼロに近いことが珍しくありません。その場合、売却価格は実質的に借地権の価値のみとなります。
実際の売却価格は計算通りにならない
路線価から計算した借地権価格は、あくまで 理論値 です。国税庁の路線価は相続税・贈与税の課税基準であり、実際の取引価格を直接示すものではありません。路線価は地価公示価格の約80%を目安に設定されているため、時価とはずれがあります。
実際の売却価格は以下の要因によって上下します。
価格が上がる要因 — 駅近や人気エリアなど立地が良い場合、建物が比較的新しく状態が良い場合、地代が周辺相場より安い場合、借地契約の残存期間が十分に長い場合、地主との関係が良好で譲渡承諾がスムーズに得られる場合は、理論値より高く売れる可能性があります。
価格が下がる要因 — 立地が悪い場合、建物が老朽化している場合、地代が高い場合、契約更新が近い場合(更新料の負担が迫っている)、地主との関係が悪く承諾に難航する可能性がある場合は、理論値を大きく下回ることがあります。
借地権が売りにくい理由
路線価で計算すると高額に見える借地権ですが、実際には売却が難しいケースも多くあります。
最大の理由は 住宅ローンが通りにくい ことです。借地権付き建物は土地の所有権がないため、金融機関によっては担保として認められず、買主が住宅ローンを利用できないケースがあります。
また、売却には 地主の譲渡承諾 が必要で、通常は借地権価格の 10%程度の譲渡承諾料 がかかります(借地借家法第19条)。地主が承諾しない場合は裁判所に借地非訟を申し立てる必要があり、手続きに6ヶ月〜1年程度かかります。
さらに、地代の値上げリスク、更新時の更新料負担、建替え時の地主承諾など、将来の不確定要素が多いことも買主の購入意欲を下げる要因です。
実際に地主が譲渡承諾を出さなかった物件で、借地非訟を約1年かけて進め売買を完了した事例(「地主の譲渡承諾がもらえない借地権物件の買取事例」)や、地主が財務省(国有地)で担保承諾書が出せない借地権アパートを自己資金で買取した事例(「旧耐震・借地権アパートの買取事例」)があります。
誰に売るかで価格が変わる
同じ借地権でも、売る相手によって成立する金額はかなり違います。路線価からの計算値はあくまで出発点で、実務では次の3つのルートを比べることになります。
| 売る相手 | 価格の目安(理論値との比較) | 期間 | 地主の承諾 |
|---|---|---|---|
| 地主(底地所有者) | 高く評価されることがある一方、下振れもある | 交渉次第。数ヶ月〜 | 不要(相手が地主のため) |
| 第三者(仲介) | 理論値の7〜9割程度 | 半年〜1年、承諾に難航すればさらに | 必要(譲渡承諾料は借地権価格の10%程度) |
| 買取業者 | 理論値の5〜7割程度 | 数週間〜数ヶ月 | 必要。ただし業者が交渉を代行することが多い |
※期間・割合はいずれも目安です。地代の水準、契約の残存期間、建物の状態、地主との関係で幅は大きく動きます。特に地主への売却は「必ず高くなる」ものではありません。 地主に買う意思や資金が無い、交渉力の差がある、建物の状態が悪いといった事情があれば、第三者売却を下回ることもあります。
地主に売る場合
地主に売る場合は、第三者に売るより高く評価されることがあります。 地主が借地権を買い取ると、地主の底地と借地権が同じ人に帰属し、借地権の負担が外れた所有権に戻るためです。地主にとっては、単に土地を一区画買うのではなく、自分の土地の利用の自由度が回復する取引になります(建築基準法や都市計画上の制限は、当然そのまま残ります)。
この「当事者が限られるかわりに、その当事者にとっては通常より価値が高い」という値のつき方は、不動産鑑定評価基準でいう 限定価格 として評価される典型的な場面のひとつです。借地権者が底地を買う場合と、底地所有者が借地権を買う場合は、いずれも権利が併合されることで増える価値が問題になります。
ただし、地主が必ず買うわけではありません。買い取る資金があるか、その土地を自分で使う予定があるかによります。地代収入を安定した資産として持ち続けたい地主であれば、そもそも買う動機がありません。打診してみる価値は高いが、断られる前提で次のルートも並行して考えておく、というのが現実的な進め方です。
買取業者に売る場合
買取価格が理論値を下回るのは、業者が次の費用とリスクを先に価格へ織り込むためです。
| 織り込まれるもの | 内容 |
|---|---|
| 譲渡承諾料 | 法定の割合ではないが、実務上は借地権価格の10%前後が目安とされることが多い(借地借家法第19条の承諾に伴う慣行) |
| 承諾が出ない場合の借地非訟 | 申立てから完了まで6ヶ月〜1年。その間の資金が寝る |
| 建物の解体・修繕 | 築古が多く、そのまま転売できないことが多い |
| 出口の狭さ | 買主側も住宅ローンが通りにくく、売り先が限られる |
裏を返すと、このリスクを自己資金で引き受けられる業者かどうかで査定額が変わります。 融資前提の業者は、融資が付かないリスクの分だけ価格を下げるか、そもそも買えません。当社が扱った事例では、地主が譲渡承諾を出さない物件を借地非訟で約1年かけて完了させたケース(「地主の譲渡承諾がもらえない借地権物件の買取事例」)や、地主が財務省(国有地)で担保承諾書が出ないため自己資金で買い取ったケース(「旧耐震・借地権アパートの買取事例」)があります。見積もりを比べるときは、金額だけでなく「承諾が出なかったらどうするか」を必ず聞いてください。 ここに答えられない業者の金額は、承諾が出る前提の数字です。
借地権割合は、売買価格そのものではない
借地権割合 売買 のような調べ方をされることがありますが、路線価図のA〜G(90〜30%)は相続税・贈与税を計算するための割合であり、売買価格を決める割合ではありません。
実務では、この割合は「おおよその出発点」として使われます。そこから、地代が相場より高いか安いか、契約が旧法か新法か、残存期間がどれだけあるか、更新料の負担がいつ来るか、といった条件で調整していきます。特に 旧法か新法か、そして普通借地権か定期借地権かは価格差として表れます。更新拒絶に正当事由が必要な点は旧法にも新法の普通借地権にも共通しますが、更新を前提にできない定期借地権は、残存期間が減るほど価値が目減りします。逆に旧法借地権は存続期間や更新後の期間の扱いが借地人に有利に働きやすく、同じ借地権割合でも評価されやすい傾向があります。ただし契約内容・残存期間・建替えや譲渡の承諾条件で変わるため、割合だけでは決まりません(違いは「旧法借地権と新法借地権の違い」を参照)。
したがって、路線価から出した金額と実際の査定額がずれていても、計算を間違えたわけではありません。ずれる理由のほうに、その借地権の実際の価値が表れています。
売却価格を上げるポイント
借地権の売却価格は業者によって査定が大きく異なるため、 必ず複数社から見積もりを取って比較 することが重要です。特に借地権の取引に慣れた専門業者は、地主交渉のノウハウを持っているため、査定額に反映される場合があります。
地主との関係が良好であれば、譲渡承諾がスムーズに得られることを買主にアピールできます。また、最低限の清掃・修繕を行い建物の見た目を整えておくことも、内覧時の印象向上につながります。
売却に必要な書類(借地契約書、建物の登記簿謄本、固定資産税納税通知書、地代の支払い証明)は事前に揃えておくと、査定・売却がスムーズに進みます。
まとめ
借地権の価格は、 更地価格 × 借地権割合 で計算するのが基本です。都心部では借地権割合60〜70%、郊外では40〜50%が一般的な目安ですが、実際の売却価格は地主との関係、建物の状態、契約条件などで大きく変動します。
路線価から算出した価格は理論値であり、実勢価格とは異なることを理解したうえで、正確な価格を知るには専門業者の査定を受けることが確実です。
借地権の基本的な仕組みや売却の全体像は「借地権の売却・買取について」で解説しています。


