借地権は売れる?売却の流れと地主の承諾を得るコツ
この記事でわかること
Q. 借地権は売却できますか?
Q. 地主が承諾してくれない場合はどうする?
Q. 借地権売却の流れは?
借地権は売却できる
「借地権って売れるの?」というご質問をよくいただきます。
結論から言うと、 借地権は売却できます 。借地権は財産権として認められており、譲渡することが可能です。
ただし、売却には 地主の承諾 が必要です。地主が承諾しない場合でも、借地借家法第19条に基づく 借地非訟 という裁判所の手続きにより、地主に代わる譲渡許可を得ることができます。
地主の承諾が必要な理由
民法第612条では、賃借権の無断譲渡を禁じています。借地契約は地主と借地人の信頼関係に基づく契約であり、借地人が変わる場合は地主の同意が必要とされています。
無断譲渡のリスク
地主の承諾なく借地権を売却すると、 借地契約の解除事由 になる可能性があります(民法第612条第2項)。ただし、判例では「無断譲渡があっても信頼関係を破壊しない特段の事情がある場合は解除できない」とする 信頼関係破壊の法理 が確立されています(最高裁昭和28年9月25日判決)。とはいえ、法的リスクを避けるためにも、必ず地主の承諾を得てから売却を進めましょう。
借地権売却の流れ
ステップ1:地主への事前相談
まずは地主に売却意思を伝え、承諾を求めます。
相談のポイント
- 売却理由を誠実に説明する
- 買主候補がいれば情報を伝える
- 承諾料の条件を確認する
- 回答期限を設ける
ステップ2:買主探し
地主の承諾見込みが得られたら、買主を探します。
買主探しの方法
- 不動産会社に仲介を依頼
- 借地権買取業者への売却
- 知人・親族への売却
ステップ3:地主の正式承諾
買主が決まったら、地主から正式な承諾(譲渡承諾)を得ます。
承諾書に記載すべき事項
- 譲渡の承諾
- 新借地人(買主)の氏名
- 承諾料の金額と支払い条件
- その他の条件
ステップ4:売買契約締結
地主の承諾を得たら、売買契約を締結します。
ステップ5:決済・引渡し
代金の授受と建物の引渡しを行います。建物の所有権移転登記も忘れずに行いましょう。
地主の承諾を得るコツ
1. 早めに相談する
売却を決めたら、なるべく早く地主に相談しましょう。突然の報告より、事前相談の方が印象が良くなります。
2. 誠実に説明する
売却理由を正直に説明しましょう。「転居するため」「相続したが使わないため」など、合理的な理由を伝えます。
3. 買主の情報を提供する
地主が気にするのは「どんな人に貸すことになるのか」です。買主候補の職業や家族構成など、信頼できる人物であることを伝えましょう。
4. 承諾料を準備する
一般的に、借地権価格の10%程度の承諾料(名義変更料)を支払います。この費用を負担する意思を示すことで、交渉がスムーズになります。
5. 契約条件の見直しを受け入れる
地主から「この機会に地代を値上げしたい」などの要望が出ることがあります。ある程度の譲歩は交渉成立のために必要な場合があります。
地主が承諾してくれない場合
地主が承諾しないケースもあります。その場合の対処法をご紹介します。
借地非訟手続き(借地借家法第19条)
地主が正当な理由なく承諾しない場合、 借地借家法第19条第1項 に基づき、裁判所に 借地非訟(借地条件変更・増改築許可・土地の賃借権の譲渡許可) を申し立てることができます。裁判所が地主に代わって譲渡を許可する制度で、地主の承諾がなくても借地権を売却できるようになります。
裁判所は、借地権の残存期間、従前の経過、借地権の譲渡を必要とする事情、その他一切の事情を考慮して判断します(同条第1項)。なお、地主には 介入権(同条第3項)があり、裁判所の許可に対して自ら借地権を買い取ることを申し出る権利が認められています。
実際に、地主の譲渡承諾が得られず借地非訟を約1年かけて進め、売買を完了した事例もあります。
借地非訟には6ヶ月〜1年程度の時間がかかり、弁護士費用も必要です。また、必ず許可されるとは限りません。
地主への売却を検討
地主が第三者への売却を嫌がる場合、地主自身への借地権の売却を提案する方法もあります。地主にとっては完全所有権を回復でき、土地の資産価値が大幅に上がるメリットがあります。
買取業者を活用
借地権専門の買取業者は、地主との交渉ノウハウや借地非訟の経験を持っています。交渉が難航している場合は、買取業者への売却を検討するのも有効な選択肢です。
承諾料の相場
借地権の譲渡承諾料の相場は、借地権価格の10%程度です。価格の計算方法については「借地権の売却価格の相場」をご覧ください。
計算例
- 借地権価格:3,000万円
- 承諾料:3,000万円 × 10% = 300万円
ただし、地域や地主との関係により異なります。事前に地主と条件を確認しておきましょう。
まとめ
借地権は売却可能ですが、地主の承諾が必要です(民法第612条)。早めに地主に相談し、承諾料(借地権価格の約10%)を準備した上で誠実に交渉することが成功の鍵です。
地主が承諾しない場合は、借地借家法第19条に基づく借地非訟の申立てにより、裁判所から譲渡許可を得ることもできます。ただし6ヶ月〜1年程度の時間がかかるため、早めの行動が重要です。
借地権の基本的な仕組みや売却の全体像は「借地権の売却・買取について」で解説しています。


