共有持分は売れる――全国11,199人調査が示す「8割が知らない」実態と早期解決の選択肢
この記事でわかること
Q. 共有持分は他の共有者の同意なしで売却できますか?
Q. 共有持分が売却できることを知っている人はどれくらいいますか?
Q. 共有持分で困っている人の悩みで最も多いものは何ですか?
Q. 共有持分の問題を放置するとどうなりますか?
隣接地の共有者から「土地の管理が悪い」と言われ、登記簿を確認したら――
当方で対応している事例から始めます。
ある方のもとに、隣接する土地の共有者を代表する遠縁の方から「土地の管理が悪い」とクレームが入りました。本人に落ち度はありませんが、念のため登記簿を取り寄せたところ、 60年前にその隣接地の共有持分が、ご本人の父親に贈与されていた ことが判明しました。父親はその後相続登記をしないまま亡くなり、ご本人もその事実をまったく知らなかったのです。
結果として、ご本人は クレーム元である隣接地の共有者の一人でもあった ことが判明しました。クレームを入れてきた相手方の土地に、自分も知らないうちに権利を持っていたわけです。当方では現在、相続登記の手続きを進めながら、この共有関係をどう解消するかを検討しています。
これは特殊な例ではありません。共有持分にまつわる「気づいていない」「知らない」は、多くの方に共通する状況であることが、全国規模の実態調査で示されています。
8割以上の方が「共有持分は売れる」ことを知らない
株式会社ネクスウィルが2024年に実施した「共有持分に関する実態調査」(全国40歳以上11,199人対象)では、認知ギャップが数字で明らかになっています。
| 質問項目 | 回答結果 |
|---|---|
| 共有持分が「売却できる」と知っている | 16.5% |
| 共有持分について「相談したことがない」 | 88.7% |
| 「すでに困っている」共有持分所有者 | 9.4% |
| 困っている方のうち「時期を問わず解決したい」 | 約70% |
| 困っている方のうち「すぐ動きたい」 | 10.3% |
つまり、 10人中8人以上は「自分の持分だけなら売れる」ことを知らない まま、固定資産税や管理費の負担を抱え続けているということです。さらに、悩みを抱えていても 約9割が誰にも相談したことがない ――これが共有持分というテーマの実情です。
なぜ「知らない」が起きるのか
共有持分は、民法第206条で「所有者は法令の制限内において自由に処分できる」と定められており、自分の持分だけであれば他の共有者の同意なく売却が可能です。しかし、この知識はほとんど一般に流通していません。
不動産屋に相談しても「共有不動産は全員の同意がないと売れない」と返されることが多く、それが「持分単独でも売れない」と誤って伝わってしまうケースが少なくありません。実際は 「不動産全体の売却」と「自分の持分だけの売却」はまったく別のルールが適用される のですが、ここを区別して説明されないため、知らないまま放置される構造が生まれています。
困っている方の半数近くが「税金・管理費の負担」を挙げている
ネクスウィルの同調査では、共有持分で「すでに困っている」と回答した方の悩みのうち、 「税金・管理費の負担」が46.7%で最多 となっています。次いで「他の共有者と意見が合わない」「将来のトラブルが不安」「そもそも売却できないと思っている」といった回答が続きます。
最多回答が「税金・管理費の負担」であるということは、共有持分の問題が 「使っていない不動産にお金を払い続けている問題」 として読まれているということです。住んでいない、収益も生まない不動産に対して、固定資産税・都市計画税・管理費が毎年かかり続ける――この負担感が、共有関係から抜けたい動機の中心にあります。
ご相談で多いのが「内緒で売却したい」「他の共有者には黙って手放したい」という声ですが、その裏側には「言い出すと話が長くなる」「もう関わりたくない」「とにかく毎年の出費を止めたい」という、ごく現実的な事情があるケースがほとんどです。
そして、 約7割の方が「時期を問わず解決したい」と答えており、悩みを抱えている方は決して少数ではありません 。「自分だけが焦っているのでは」と感じる必要はないというのが、この調査から読み取れるもう一つの事実です。
知らずに放置すると何が起きるか――冒頭事例の続き
冒頭でご紹介した事例に戻ります。60年前の未登記贈与が判明したケースで、当方が確認できた問題はこうでした。
1. 共有関係が連鎖的に拡大していた
60年放置されたあいだに、贈与した側・受けた側の両方で複数回の相続が発生していました。本来なら2人の共有だったものが、現時点で 当事者が10名以上に膨れ上がっていた のです。これは数次相続による共有者増加の典型パターンで、構造の詳細は共有名義の不動産を放置すると?相続で起きる問題で図解しています。
2. 相手方も本人の存在を知らずに使っていた
クレームを入れてきた共有者の方々は、隣接地を「自分たちだけの土地」と信じて使っていました。しかし登記上は本人にも持分があるため、その使い方は厳密には他の共有者(=本人)の同意が必要だった可能性があります。 相手方もまた、知らないうちに別の共有者を巻き込んでいた という構図です。
3. 解決には相続登記が前提になる
そもそも本人名義になっていない(祖父名義のまま)ため、何をするにも先に相続登記を完了させる必要があります。当方では現在、戸籍収集から始めて手続きを進めていますが、 60年分の相続関係を遡る作業は数か月単位の時間と、それなりの専門家費用がかかる のが実情です。
加えて、2024年4月1日施行の相続登記の申請義務化(法務省)により、相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記しないと10万円以下の過料の対象となります。施行前に発生した相続も対象で、令和9年(2027年)3月31日までに登記する必要があるため、未登記のまま放置されている案件は時間的にも待ったなしの状態です。
「気づいた時点で動けば」という言葉の意味は、まさにこのコストの差と期限にあります。今気づいた人が今動けば数か月で済むことが、もう一世代放置されると相続人がさらに増え、解決コストはさらに膨らみます。
解決の選択肢は3つ
共有持分を抱えている場合、選べる方向性は大きく3つです。
① 自分の持分だけを売却する
民法第206条に基づき、他の共有者の同意なく自分の持分のみを売却できます。買取業者に売る形であれば、最短数日〜数週間で現金化が可能で、そのまま共有関係から完全に抜けられます。手続き自体は他の共有者に通知せず進められるため、関係を悪化させずに離脱したい方に向いた選択肢です。
具体的な方法は共有持分だけ売却できる?他の共有者の同意なしで売る方法、価格相場は共有持分の買取価格はいくら?相場と高く売るコツで詳しく解説しています。相続で実家が共有になった場合の判断軸については相続で共有になった実家|持分売却という選択肢をご覧ください。
② 共有物分割請求で全員の関係を清算する
裁判所に共有状態の解消を求める手続きです(民法第258条)。話し合いが平行線になっている場合の最終手段で、共有者全員を巻き込んで一度に整理したい場合の選択肢です。実務上は争点の少ない事件で半年〜1年、争いがある事件では1〜2年以上に長期化することがあり、印紙代・不動産鑑定費用・弁護士費用が発生します(参考: 文の風東京法律事務所「共有物分割請求訴訟とは」)。
③ 何もしない
選択肢の一つではありますが、固定資産税・管理費の負担は続き、相続のたびに共有者が増えます。冒頭事例のように 次の世代に問題を持ち越したときのコストの方が大きくなるケースが多い という前提で判断する必要があります。
「気づいた時点」が一番動きやすいタイミング
ネクスウィル調査が示すとおり、共有持分の悩みを抱えている方の 約7割は「時期を問わず解決したい」、10.3%は「すぐにでも動きたい」 と答えています。焦っているのは自分だけではありません。
そして、共有関係は 時間とともに必ず複雑化します 。今2人の共有でも、次の相続で4人、その次で8人と倍増していくのが構造上の宿命です。冒頭の事例のように60年放置すれば、そもそも自分が共有者であることすら忘れられた状態になります。
「気づいた」「知った」ということ自体が、解決のスタート地点に立っていることを意味します。共有持分は売却できますし、自分だけの判断で進められます。現状を整理したい段階のご相談でも構いませんので、共有持分の買取・ご相談窓口からお気軽にお問い合わせください。
参考リンク
- 民法 | e-Gov法令検索(第206条:所有権の内容/第251条:共有物の変更/第258条:共有物分割の訴え)
- 株式会社ネクスウィル「共有持分に関する実態調査」(PR TIMES)(全国40歳以上11,199人対象)
- 法務省「相続登記の申請義務化について」
- 不動産登記法 | e-Gov法令検索(第76条の2:相続登記の申請義務/第164条:過料)


