共有名義の不動産を放置すると?相続で起きる問題

共有名義の不動産を放置すると?相続で起きる問題

物件タイプ別 2026.04.04 公開 2026.08.11 更新
#共有名義 #放置 #リスク #相続

この記事でわかること

Q. 共有名義の不動産を放置するとどうなりますか?
A. 相続が繰り返されて共有者が増え続け、全員の合意が得られず売却も建替えもできなくなります。固定資産税の負担や管理責任は残るため、持ち続けるほど問題が深刻化します。
Q. 共有者が増えすぎると何が問題ですか?
A. 共有不動産の売却には共有者全員の合意が必要です。共有者が10人、20人と増えると全員の意思確認だけでも困難になり、事実上の「塩漬け状態」に陥ります。
Q. 共有名義の不動産を早期に解消するにはどうすればいいですか?
A. 自分の持分だけを買取業者に売却する方法があります。他の共有者の同意は不要で、確実に共有状態から離脱できます。また、共有物分割請求で裁判所に分割を求めることも可能です。

共有名義の不動産、放置していませんか?

「相続で兄弟の共有になったけど、特に困っていないから」「とりあえず今のままでいいか」――共有名義の不動産を放置している方は少なくありません。

しかし、共有不動産の放置は 時間が経つほどリスクが大きくなります 。今は問題がなくても、5年後・10年後に取り返しのつかない状況になるケースは珍しくありません。

放置のリスク1:意思決定ができなくなる

共有不動産では、行為の種類によって必要な同意の範囲が異なります。

行為必要な同意具体例
保存行為単独で可能修繕、不法占拠者の排除
管理行為持分の過半数短期賃貸借、管理方法の変更
変更・処分行為全員の同意売却、建替え、長期賃貸借

つまり、 売却や建替えには共有者全員の合意が必要 です。共有者が2〜3人なら話し合いで解決できるかもしれませんが、人数が増えると合意形成は急速に難しくなります。

実際に起きていること

  • 兄は「いつか住むかもしれない」と売却に反対
  • 姉は「管理が面倒だから売りたい」
  • 弟は「親の思い出がある家を壊したくない」

このような意見の対立があると、何年経っても結論が出ません。その間、建物は劣化し、不動産の価値は下がり続けます。

放置のリスク2:相続で共有者が増え続ける

共有名義の放置で最も深刻なのが、 数次相続による共有者の倍増 です。

共有者増加のシミュレーション

1世代目父(死亡)2世代目子A(死亡)子B子C3人3世代目孫1孫2子B(死亡)子C(死亡)4人4世代目曾孫1曾孫2 … 曾孫7曾孫88人5世代目共有者 16人以上16人+世代を重ねるほど共有者は倍増していく

わずか3〜4世代で共有者が10人を超えます。相続が発生するたびに、面識のない親族が共有者に加わります。

共有者が増えると起きる問題

  • 全員の連絡先が分からない :戸籍を辿って調べる必要がある
  • 面識がない人と交渉が必要 :会ったこともない「いとこの子供」と合意形成
  • 海外在住者がいる :署名・押印の手続きが困難
  • 認知症の共有者がいる :成年後見人の選任が必要(費用20〜50万円)
  • 家族と縁を切った共有者がいる :勘当や絶縁で親族も消息を知らず、戸籍の附票でも追えないケースがある

詳しいトラブル事例は「共有名義のトラブル事例」をご覧ください。

放置のリスク3:固定資産税の負担問題

代表者に全額請求される

共有不動産の固定資産税は、 共有者の中の代表者1人に全額が請求 されます。

固定資産税:年間15万円
共有者:3人(各1/3)

本来の負担:各5万円
実際の請求:代表者に15万円が届く

他の共有者から負担分を回収できればよいのですが、放置状態では次のような問題が発生します。

  • 「使っていないのに払いたくない」と拒否される
  • 連絡が取れない共有者がいる
  • 負担割合で揉める

結果として、代表者が全額を負担し続けるか、 滞納して延滞金が発生する ことになります。

滞納するとどうなるか

固定資産税を滞納した後の手続きは、地方税法に期限が定められています。 「滞納◯ヶ月で督促状」といった月数は、法律の定めではありません。 法律上の期限は、一般に思われているよりかなり短く設定されています。

段階法律上の定め根拠
督促状納期限後 20日以内 に発しなければならない地方税法第371条第1項
差押え督促状を発した日から起算して 10日 を経過した日までに完納しないとき、滞納者の財産を差し押さえなければならない地方税法第373条第1項第1号
換価・公売差し押さえた財産は、国税徴収法に規定する滞納処分の例により換価される地方税法第373条第7項

つまり 法律上は、督促状が発せられてから10日を過ぎた時点で、差押えの要件を満たします。

ただし、実際にその日数で差し押さえられるとはかぎりません。多くの自治体では、この間に催告書や差押予告書を送り、分割納付の相談に応じています。これらは法律で時期が定められた手続きではなく、自治体ごとの運用です。 裏を返せば「1年は大丈夫」といった全国共通の猶予期間もありません。 自分の自治体の扱いは、届いた書面と市区町村の窓口で確認してください。なお市町村は、条例で督促状の期間を別に定めることができます(地方税法第371条第2項)。

固定資産税を徴収する権利は、法定納期限の翌日から起算して 5年間 行使しないと時効で消滅します(地方税法第18条第1項)。ただし督促を受けると、督促状を発した日から10日を経過した日までは時効が完成せず、その期間を過ぎた時点から改めて進行し直します(地方税法第18条の2第1項第2号)。 放置して時効を待つという方法は、現実的ではありません。

放置のリスク4:共有者間のトラブル

よくあるトラブルパターン

パターン1:一人だけが住んでいる

共有者の一人が不動産に住んでいる場合、他の共有者から「家賃を払え」「使用料を負担しろ」と求められることがあります。裁判になるケースもあります。

パターン2:勝手にリフォームした

共有者の一人が独断でリフォームを実施し、他の共有者に費用負担を求めたものの、合意なく行ったため拒否されるケースがあります。

パターン3:管理を誰もしない

全員が「自分の責任ではない」と考え、建物の管理を放棄した結果、老朽化が進んで近隣から苦情が来ることがあります。

共有者との連絡に問題がある場合は「共有者と連絡が取れない場合の対処法」も参考になります。

実際にあった放置のケース

共有不動産の放置は、教科書的なリスクだけでは伝わらない問題を引き起こします。ここでは、実際に見聞きした事例を紹介します。

ケース1:関係者37名、取りまとめに3年

知人の買取業者が対応した案件では、相続登記が長期間放置された結果、 関係者が37名 にまで膨れ上がっていました。全員の意思確認と書類の取りまとめに 約3年 を要したそうです。

前述のシミュレーションでは3〜4世代で16人としましたが、現実にはそれをはるかに超える事態が起きています。

ケース2:曾祖父から放置、ブラジル移住者の消息不明

別の業者から聞いた事例です。 曾祖父の代から相続登記が放置 されており、祖父の世代でブラジルに移住した親族がいました。消息が完全に途絶えており、 不在者財産管理人の選任 を経て処理することになりました。

関係者の数自体は少なかったものの、一人が海外在住だったため、 司法書士を海外に派遣して書類を整える 必要がありました。これが可能だったのは都内の高額物件だったからです。地方の低価格な物件であれば、司法書士の渡航費用だけで採算が合わなくなります。

ケース3:9人兄弟でも相続人が少なかったケース

当社で扱った案件です。被相続人の祖父は9人兄弟で、数十名規模の関係者を覚悟しましたが、 戦争で半数が幼くして亡くなっていた こと、また健在な兄弟が数名いたことから、最終的な関係者は 十数名で済みました 。

9人兄弟と聞けば相続人は膨大な数になりそうですが、歴史的な背景で相続人が減っているケースもあります。ただし、これは結果論です。戸籍を辿って確認するまで、関係者が何人になるかは分かりません。この案件でも、調査の過程で二重本籍が抹消されていたことが判明するなど、戸籍の確認には想定外の手間がかかりました。

共通する教訓

どのケースにも共通するのは、 放置期間が長いほど解決コストが跳ね上がる ということです。関係者が少なくても海外在住者がいれば数百万円の費用がかかり、関係者が多ければ年単位の時間を要します。 これ以上放置すれば、さらに次の世代に問題が引き継がれます。

早期対応の選択肢

共有名義の問題は、早く動くほど選択肢が多く残されています。

選択肢1:共有者間で話し合う

全員が売却に合意できれば、不動産全体を売却できます。最も高値で売れる方法です。

向いているケース

  • 共有者が少数(2〜3人)
  • 全員と連絡が取れる
  • 関係が良好

選択肢2:自分の持分だけを売却する

他の共有者の同意なしに、自分の持分だけを買取業者に売却する方法です。持分売却の仕組みは「共有持分だけ売却できる?」で詳しく解説しています。

向いているケース

  • 話し合いがまとまらない
  • 共有者と連絡が取れない
  • 早く共有状態から離脱したい

価格の目安

  • 持分相当額の50〜70%程度
  • 例:評価額3,000万円の不動産の1/3持分 → 500〜700万円

選択肢3:共有物分割請求

裁判所に共有物の分割を求める手続きです。

分割方法内容
現物分割土地を物理的に分ける
代償分割一人が取得し、他の共有者に金銭を支払う
換価分割競売にかけて代金を分配

裁判にかかる費用は30〜100万円程度、期間は6ヶ月〜2年程度です。

共有名義不動産の負のスパイラルと解決策:意思決定不可(全員合意が必要)、数次相続による共有者の倍増(5世代で16人以上)、固定資産税の代表者一括請求といった放置リスクと、共有者間の話し合い・自分の持分だけ売却・共有物分割請求(裁判)という3つの選択肢の整理

まとめ

共有名義の不動産を放置するリスクをまとめます。

放置のリスク

  • 意思決定ができなくなる(売却・建替え不可)
  • 相続のたびに共有者が増える(数次相続)
  • 固定資産税の負担が偏る
  • 共有者間のトラブルが発生する
  • 最終的に売りたくても売れなくなる

早期対応のメリット

  • 共有者が少ないうちは合意形成しやすい
  • 不動産の価値が下がる前に対処できる
  • 次世代に問題を先送りしない

相続で共有になった不動産をお持ちの方は「相続で共有になった実家の対処法」もご覧ください。共有持分の基本的な仕組みや売却の全体像は「共有持分の売却・買取について」で解説しています。

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