相続で共有になった実家|持分売却という選択肢
この記事でわかること
Q. 相続で共有になった実家の持分だけ売れますか?
Q. 持分売却の価格はいくらになりますか?
Q. 持分売却を検討すべきなのはどんなケースですか?
相続で実家が共有になるケース
親が亡くなり実家を相続する際、遺言書がない場合は民法第900条に定める 法定相続分 に従って相続することになります。遺産分割協議で特定の相続人が単独で取得する合意ができれば共有にはなりませんが、協議がまとまらない場合は法定相続分に応じた共有状態になります。
| ケース | 共有者 | 持分(民法第900条) |
|---|---|---|
| 配偶者と子供1人 | 配偶者・子 | 1/2ずつ |
| 子供3人(配偶者なし) | 子3人 | 1/3ずつ |
| 配偶者と子供2人 | 配偶者・子2人 | 1/2・1/4・1/4 |
共有状態の問題点
相続で実家が共有になると、様々な問題が発生します。
1. 売却に全員の同意が必要
不動産全体を売却するには、共有者全員の同意が必要です(民法第251条・変更行為)。一人でも反対すれば売却できません。
2. 活用方針が決まらない
共有者それぞれの考えが異なると方針が決まりません。売却したい人、住みたい人、賃貸に出したい人、何も決められない人が混在するケースは珍しくありません。賃貸に出す場合も共有者の持分の過半数の同意が必要です(民法第252条・管理行為)。
3. 管理の負担が偏る
固定資産税の支払い、草刈り、修繕などの管理を、近くに住む共有者だけが負担するケースが多いです。民法第253条では各共有者は持分に応じて管理費用を負担する義務がありますが、実際には一部の共有者に負担が集中しがちです。
4. 時間が経つほど複雑に
共有者の一人が亡くなると、その持分がさらに相続され、共有者が増えていきます(いわゆる 数次相続 )。世代を経るごとに共有者が倍々に増え、全員の同意を得ることが事実上不可能になるケースもあります。
持分売却という選択肢
共有状態を解消したいが、他の共有者との話し合いがまとまらない場合、 自分の持分だけを売却する という選択肢があります。民法第206条により、各共有者は自分の持分を自由に処分できるため、他の共有者の同意なく売却が可能です。詳しい手続きは「共有持分だけ売却できる?」をご覧ください。
実際に、兄弟間で意見が対立し身動きが取れなくなった共有持分を、第三者が買い取ることで解決に至った事例もあります。
持分売却のメリット
最大のメリットは 他の共有者の同意が不要 で、自分だけの判断で売却できる点です。話し合いがまとまらなくても確実に現金化でき、固定資産税や管理の負担から解放されます。長引く話し合いに消耗している方にとっては、スピーディーに解決できる手段です。
持分売却のデメリット
一方で、全体売却に比べると売却価格は低くなります(持分相当額の50〜70%程度)。また、買取業者が新たな共有者として他の共有者と交渉を行うことになるため、事前に売却意向を伝えておかないと他の共有者との関係が悪化する可能性があります。
持分売却を検討すべきケース
以下のような状況では、持分売却を検討する価値があります。
ケース1:他の共有者と意見が合わない
「売却したい」と思っても、他の共有者が反対している場合。
ケース2:話し合いが長期化
何年も話し合いを続けているが、一向にまとまらない場合。
ケース3:共有者と連絡が取れない
疎遠になっている、行方不明など、連絡が取れない共有者がいる場合。
ケース4:早く現金化したい
相続税の支払いや、他の資金需要があり、早急に現金化したい場合。
ケース5:管理負担から解放されたい
固定資産税や管理を一人で負担しており、その負担から解放されたい場合。
持分売却の流れ
ステップ1:査定依頼
複数の買取業者に査定を依頼します。
ステップ2:価格・条件の確認
査定結果を比較し、価格や条件を確認します。
ステップ3:売却の決断
価格に納得できれば、売却を決断します。
ステップ4:契約・決済
売買契約を締結し、代金を受け取ります。
ステップ5:登記変更
持分の所有権移転登記を行います。
持分売却の価格目安
持分売却の価格は、不動産全体の価格から計算した持分相当額より低くなります。
目安
- 他の共有者への売却:持分相当額の70〜100%
- 買取業者への売却:持分相当額の50〜70%
計算例
- 実家の評価額:3,000万円
- 自分の持分:1/3
- 持分相当額:1,000万円
- 買取業者への売却価格:500〜700万円程度
持分売却前にやるべきこと
1. 他の共有者への確認
法的には同意不要ですが、事前に売却意向を伝えておくことをおすすめします。突然知らされるとトラブルになりやすいです。
2. 複数社から見積もり
買取業者によって価格は異なります。必ず3社以上から見積もりを取りましょう。
3. 税金の確認
売却益が出る場合、譲渡所得税がかかります。相続した不動産の場合、被相続人が取得した時期と取得費を引き継ぐことができます(所得税法第60条)。また、相続税の申告期限から3年以内に売却すれば、 相続税の取得費加算の特例 (租税特別措置法第39条)が適用できる場合があります。詳しくは税理士に相談しましょう。
4. 相続登記の確認
持分を売却するには、相続登記が完了している必要があります。2024年4月から相続登記が義務化されており(不動産登記法第76条の2)、相続を知った日から3年以内に登記しなければ10万円以下の過料が科される可能性があります。未了の場合は先に登記を済ませましょう。
まとめ
相続で共有になった実家は、共有者間で意見がまとまらないと身動きが取れなくなります。民法第206条により自分の持分は他の共有者の同意なく売却でき、共有状態から離脱できる有効な手段です。
ただし、全体売却に比べて価格は下がるため(持分相当額の50〜70%)、まずは共有者全員での売却を検討し、それが難しい場合に持分売却を選択するのが合理的です。買取価格の目安は「共有持分の買取価格の相場」で解説しています。共有者と連絡が取れない場合でも、持分売却なら対応可能です。共有持分の基本的な仕組みや売却の全体像は「共有持分の売却・買取について」にまとめています。


