相続手続きで発覚した「重複本籍」とは?戸籍に刻まれた戦後の混乱
この記事でわかること
Q. 重複本籍(複本籍)とは何ですか?
Q. なぜ重複本籍が発生するのですか?
Q. 重複本籍が見つかった場合、相続手続きに影響はありますか?
「戸籍を消された謎の子供がいた」
「なんか祖父さんに戸籍が消された謎の子供がいたんだよな。」
食事中に知人が言った。知人は沖縄在住で、例の相続未登記の件だ。知人に祖父の結婚から除籍までの戸籍謄本を取り寄せてもらったのだが、その書類を受け取るついでに、軽く飲むことにした。
戸籍謄本を見ると、確かに裁判所の許可だか何だかで、戸籍を消除と書かれている。飲んでいるので、後日じっくり見ようと、その場では書類を汚さないようにカバンにしまった。
AIに戸籍謄本を読ませてみた
数日後、戸籍謄本に改めて目を通す。私は法律の専門家でも行政マンでもないので、正直、何が書いてあるのかよく分からない。縦書きの文章だが、ダメもとでAIにカメラで撮影して質問してみた。
これは戸籍謄本(除籍謄本)の一部です。 重複本籍(複本籍)があったため、昭和50年×月×日に戸籍訂正許可の裁判が確定し、同月△日に戸籍訂正申請により消除された。
重複本籍?
重複本籍(複本籍)とは
重複本籍とは、本来1か所にしかないはずの本籍が、複数の市区町村に存在してしまう状態です。制度上は許されない状態であり、発覚した場合は裁判所の許可を得て訂正されます。
なぜ起きるのか
戦中・戦後の混乱期に戸籍台帳が焼失し、戸籍を復元する際に行政間の連携がうまく取れなかったことが主な原因です。
特に沖縄では、以下の事情が重なり、戸籍の混乱が起きやすい条件が揃っていました。
沖縄では、2つの仏壇――つまり2つの家系を抱える家も珍しくありません。養子縁組が頻繁に行われた結果、戸籍の移動も多くなり、混乱が生じやすくなったのです。
相続実務への影響
今回のケースでは、すでに裁判所の許可を経て重複戸籍が消除されていたため、実務上の大きな問題にはなりませんでした。この人物は知人の祖父の戸籍からは消除されており、この戸籍上は相続人として現れません。
しかし、もし戸籍が修正されていなかったらどうなっていたか。一族も知らない親族が相続人として存在することになり、その人物を探す羽目になっていた可能性があります。
実際には、相続の際に戸籍を出生まで遡って確認するため、よほどのレアケースでもない限り、現代の実務に直接影響することは少ないでしょう。ただし、戸籍の取り寄せに想定以上の時間と手間がかかることは覚悟しておく必要があります。
相続未登記を長期間放置するリスクについては「共有名義の不動産を放置すると?相続で起きる問題」で詳しく解説しています。
戸籍は歴史の証拠でもある
戸籍から戦中・戦後の混乱期をリアルに感じられるとは思わなかった。これもまた歴史の証拠なのだろう。
戸籍は単なる身分記録ではなく、個人や一族を超えて、時代の混乱そのものを刻み込んだ歴史資料でもあるのだ。


