駅徒歩10分でも値がつかない土地がある|擁壁・狭小・築古が重なるとどうなるか

駅徒歩10分でも値がつかない土地がある|擁壁・狭小・築古が重なるとどうなるか

物件タイプ別 2026.08.25 公開
#擁壁 #狭小地 #空き家 #買取価格

この記事でわかること

Q. 駅から近ければ、古い家でも売れるのではないですか?
A. 駅からの距離は価格を押し上げる要因ですが、単独で結論を決めるものではありません。擁壁の造り直しや解体、建替えの制約といった費用や制限が重なると、立地による加点をすべて食いつぶしてしまうことがあります。実際に、駅徒歩10分でも買取価格を提示できない土地はあります。
Q. 高さ3.5mの擁壁があると、なぜ価格が下がるのですか?
A. 高さのある擁壁は、現行の基準に適合しているかどうかの確認が必要で、適合していない場合は造り直しの費用がかかります。工事には重機の搬入路や仮設の計画も要り、狭い土地ほど割高になります。建替えの際に擁壁の安全性が問われることもあり、買主はこれらを価格から差し引いて考えます。
Q. 買取価格がつかない土地は、どうすればよいですか?
A. 隣地の所有者への打診、自治体の空き家バンクへの登録、相続土地国庫帰属制度の検討などが選択肢になります。ただし国庫帰属制度は建物がある土地では申請できず、空き家を解体してからの手続きになります。いずれも条件がありますが、持ち続けるあいだも固定資産税と管理の負担は続きます。まず現状の評価を正確に知ることから始めるのが現実的です。

立地だけ見れば、悪くない

私鉄の駅から徒歩10分、土地はおよそ24坪の空き家。敷地には高さ3.5mほどの擁壁があり、駐車スペースは取れない。建物は古い。こうした土地には、買取価格が付かないことがあります。

駅からの距離は、価格を考えるうえでもっとも分かりやすい加点要素です。徒歩10分なら通勤も日常の買い物も成立しますし、空き家であっても、更地にして建て直す前提の買い手が現れる余地があります。都内であれば十分に通用する条件です。

ところが周辺で実際に売れた事例をたどると、この帯に値段が付いていないことがあります。何が起きているのかを順に見ていきます。

何が減点しているのか

高さ3.5mの擁壁

いちばん重いのがこれです。

擁壁は、高低差のある土地を支えるための構造物です。高さが2mを超えると法律上の扱いが変わり、安全性の確認が求められます。3.5mともなれば、それが現行の基準に適合しているかどうかが正面から問われます。国土交通省も宅地擁壁の安全性について注意を促しており、古い擁壁ほど確認が必要になります。

適合していなければ、造り直すことになります。この工事が高くつきます。しかも擁壁の工事は、重機を入れる道と、工事中に土を支えておく仮設の計画が必要で、敷地が狭いほど段取りが複雑になり、単価が上がります。

擁壁そのものについては「擁壁のある土地の売却」で、がけ条例による建築の制限については「傾斜地・がけ条例」で、それぞれ詳しく説明しています。

24坪という広さ

24坪はおよそ79平方メートルです。都内であれば戸建てが建たない広さではありません。ただ、擁壁と組み合わさると意味が変わります。

狭い敷地では、擁壁の工事に必要な仮設のスペースが取れなくなります。同じ工事でも、広い土地なら敷地内で処理できることが、狭い土地では隣地の協力を仰いだり、道路を使う手続きを踏んだりすることになります。工事費は面積に比例して安くなるどころか、狭さのぶん割高になります。

建てられる建物の規模にも上限が生まれますから、工事費を回収できる売値になりません。

駐車スペースが取れない

都内でも、この立地帯で戸建てを探す層は車を前提にしていることが多く、駐車場が取れない区画は買い手が細ります。擁壁と敷地の形状によっては、これを確保できません。

建物の古さ

建物が古ければ、そのままでは住めません。リフォームして貸すか、壊して土地として売るかのどちらかになります。壊すなら解体費が、貸すならリフォーム費が、それぞれ先に出ていきます。

減点は、足し算ではなく掛け算で効く

ここがこの記事でいちばんお伝えしたいところです。

減価の要因が一つだけなら、価格を下げることで吸収できます。擁壁だけ、あるいは狭さだけであれば、その分を差し引いた金額で買い取れる可能性は十分にあります。実際、擁壁のある土地も狭小地も、私たちは取り扱ってきました。

問題は、重なったときです。擁壁の工事費は狭さによって上がり、狭さによる建物の制約は駐車場が取れないことで買い手をさらに絞り、古い建物は解体費として最初に引かれる。それぞれが独立に効くのではなく、互いの不利を増幅します。

その結果、差し引いていった先の数字がゼロを下回ります。100万円を切る水準まで下げてもなお、工事と解体にかかる費用のほうが上回る。これが「値段が付かない」ということの中身です。

収益物件としても成り立つとは限らない

土地として無理なら、建物を直して貸す道はどうか。

古い建物を賃貸に回すには、まとまったリフォームが必要です。そのうえで得られる家賃を積み上げても、リフォーム費を回収するまでの年数が現実的な範囲に収まらないことがあります。駅から徒歩10分という条件は家賃にも効くのですが、擁壁を抱えたままの物件を長期に保有する前提には、それだけでは足りません。

「駅が近いから大丈夫」は、いつでも成り立つわけではない

不動産の情報を調べていると、駅からの距離が価格を決めるという説明によく出会います。おおむね正しいのですが、それは減価の要因が並のときの話です。

擁壁と狭さと古さが揃うと、立地の加点は先に食いつぶされます。駅が近いことは価格の下支えになるものの、費用のかかる制約をいくつも打ち消せるほどの力はありません。ご自身の物件を「駅が近いからそれなりの値段にはなるはず」と見積もっておられる場合、この点は一度確かめておく価値があります。

それでも、打てる手はあります

買取の価格が立たないとしても、選択肢が尽きたわけではありません。

まず現実的なのは、隣地の所有者への打診です。隣接地と一体になれば、擁壁や、土地が道路に接する幅の問題が解消することがあり、周辺の誰にとっても価値がない土地が、隣の人にとってだけは価値を持つ、という場面は珍しくありません。

自治体の空き家バンクに登録して、相場ではなく縁で決まる買い手を待つ方法もあります。相続で取得した土地であれば、相続土地国庫帰属制度(相続した土地を国に引き取ってもらう制度)を確認する余地もあります。ただし要件は厳しく、建物がある土地は申請できません。空き家が建ったままでは対象外で、先に解体しておく必要があります。

いずれにせよ、持ち続けているあいだも固定資産税は毎年かかり、建物は傷んでいきます。この点は「訳あり物件、持ち続けていませんか」にまとめました。

なないろ土地査定の姿勢

擁壁のある土地を買わない、狭小地を買わない、ということではありません。単独の条件であれば、価格に反映したうえで取り扱っています。

一方で、費用のかかる制約が重なって計算が合わなくなることもあります。そのときに、買えるかのような数字をお出しすることはしません。買えないなら買えないと、理由を添えてお伝えします。

そのうえで、隣地への打診や制度の利用といった、私たちの買取以外の道もあわせてご案内します。査定はそのための材料です。

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