市街化調整区域の農地転用|売却までの流れ
この記事でわかること
Q. 市街化調整区域の農地転用に必要な許可は?
Q. 農地転用の費用と期間は?
Q. 転用が難しい場合はどうする?
市街化調整区域の農地転用
市街化調整区域にある農地を売却するには、 農地法 と 都市計画法 の両方の規制をクリアする必要があります。市街化調整区域は都市計画法第7条第3項により「市街化を抑制すべき区域」と定められており、原則として建物の建築が制限されているため、転用のハードルが通常より高くなります。市街化調整区域の土地売却については「市街化調整区域の土地は売れる?」もご覧ください。
二重の規制
| 法律 | 規制内容 | 許可 |
|---|---|---|
| 農地法 | 農地の転用・売買 | 第4条・第5条許可 |
| 都市計画法 | 開発行為の制限 | 第29条第1項(開発許可) |
農地法の許可の種類
| 許可 | 内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 第3条許可 | 農地のまま売買・賃貸(権利移動) | 農地法第3条 |
| 第4条許可 | 自分で農地を転用 | 農地法第4条 |
| 第5条許可 | 転用を前提に売買・賃貸 | 農地法第5条 |
売却の場合は第5条許可が必要です。 第5条許可は、転用目的を持つ買主が決まっている状態で、売主と買主が共同で申請します。
転用の条件
立地基準
農地の区分によって、転用の可否が異なります。
| 区分 | 転用 | 内容 |
|---|---|---|
| 農用地区域内農地 | 原則不可 | 農業振興地域内の農地 |
| 甲種農地 | 原則不可 | 特に良好な営農条件の農地 |
| 第1種農地 | 原則不可 | 良好な営農条件の農地 |
| 第2種農地 | 条件付き許可 | 市街化が見込まれる農地 |
| 第3種農地 | 原則許可 | 市街地にある農地 |
一般基準
立地基準を満たしても、一般基準を満たす必要があります。
確認事項
- 転用目的が明確か
- 資力・信用があるか
- 転用の必要性があるか
- 周辺農地への影響はないか
市街化調整区域特有の問題
市街化調整区域では、農地転用の許可に加えて 都市計画法第29条第1項に基づく開発許可 も必要です。建物を建築する場合や一定規模以上の土地の形状変更を行う場合が対象となります。
開発許可は都市計画法第34条に定める要件(分家住宅、既存集落内の自己用住宅、沿道サービス施設等)のいずれかに該当しなければ原則として下りません。開発許可が得られなければ農地転用の許可も下りないため、事前に都市計画課への相談が重要です。
申請手続きの流れ
ステップ1:事前相談
市区町村の農業委員会と都市計画課に相談します。
確認事項
- 農地の区分
- 転用の可否
- 開発許可の可能性
- 必要な書類
ステップ2:買主の確定
転用の目的と買主を確定します。
5条許可の場合
- 転用目的が明確であること
- 買主が決まっていること
ステップ3:申請書類の準備
必要書類を準備します。
農地法5条許可の主な書類
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 農地転用許可申請書 | 所定の様式 |
| 土地の登記事項証明書 | 権利関係の確認 |
| 位置図・公図 | 土地の位置 |
| 事業計画書 | 転用後の利用計画 |
| 資金計画書 | 資金の裏付け |
| 土地所有者の同意書 | 売主の同意 |
ステップ4:申請
農業委員会に申請します。
申請時期
- 毎月締め切りがある(自治体により異なる)
- 月1回の農業委員会で審査
ステップ5:審査・許可
申請内容が審査され、許可が下ります。
審査期間
- 標準処理期間:4〜6週間
- 県知事許可の場合:2〜3ヶ月
ステップ6:売買契約・決済
許可が下りたら、売買契約を締結し、決済を行います。
ステップ7:転用届出
転用工事完了後、届出を行います。
費用と期間
費用の目安
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| 申請手数料 | 数千円 |
| 行政書士報酬 | 10〜20万円 |
| 測量費用 | 10〜30万円 |
| その他実費 | 数万円 |
期間の目安
| ステップ | 期間 |
|---|---|
| 事前相談〜書類準備 | 1〜2ヶ月 |
| 申請〜許可 | 1〜3ヶ月 |
| 許可〜決済 | 1ヶ月 |
| 合計 | 3〜6ヶ月 |
転用が難しい場合の対応
農地のまま売却
農地法3条許可を取得し、農地のまま売却します。
条件
- 買主が農業を営むこと
- 農業委員会の許可
デメリット
- 買主が農家に限られる
- 価格が安い
相続放棄・国庫帰属
相続した農地の場合、以下の選択肢もあります。
- 相続放棄(期限内)
- 相続土地国庫帰属制度(条件あり)
買取業者への相談
農地転用が難しい場合でも、市街化調整区域の取引経験が豊富な買取業者に相談する価値があります。転用の可能性を調査してくれるほか、転用困難な農地でも既存建物の活用(リフォーム・賃貸運用等)を前提に買い取ってくれる場合があります。
実際に、市街化調整区域内のアパートを自己資金で買い取り、外壁・屋根の塗り直しやインターネット環境を整備して満室運営している事例もあります。
まとめ
市街化調整区域の農地転用は、農地法(第5条許可)と都市計画法(第29条の開発許可)の二重の規制をクリアする必要があり、通常の農地転用より複雑です。費用は20〜50万円程度、期間は3〜6ヶ月が目安です。
転用が難しい場合は、農地のままの売却(第3条許可)や買取業者への相談など、別の選択肢も検討してください。
市街化調整区域の基本的な仕組みや売却が困難な理由は「市街化調整区域の売却・買取」で解説しています。売却方法の比較は「市街化調整区域の土地は売れる?」もご覧ください。


