傾斜地・崖地は売れる?造成費用と売却相場
この記事でわかること
Q. 傾斜地・崖地の売却相場はどれくらいですか?
Q. 傾斜地の造成費用はどれくらいかかりますか?
Q. 傾斜地を売却する方法にはどんな選択肢がありますか?
傾斜地・崖地とは
傾斜地とは、勾配のある土地のことです。特に急な傾斜の土地は「崖地」と呼ばれます。
傾斜の程度
| 区分 | 勾配 | 特徴 |
|---|---|---|
| 緩傾斜 | 15度未満 | 造成で平坦化可能 |
| 中傾斜 | 15〜30度 | 造成費用がかかる |
| 急傾斜 | 30度以上 | 崖条例の対象、造成困難 |
崖地の定義
多くの自治体では、高さ2m以上かつ勾配30度以上の斜面を「崖」と定義しています。
傾斜地・崖地は売れる?
結論:売れるが、条件による
傾斜地・崖地でも売却は可能ですが、条件によって難易度が大きく異なります。
売れやすいケース
- 造成費用が安く済む
- 眺望が良い
- アクセスが良い
- 擁壁が整備済み
売れにくいケース
- 造成費用が高い
- 崖条例の制約が厳しい
- 擁壁が老朽化
- アクセスが悪い
造成費用
費用の目安
傾斜地を平坦にするには、造成工事が必要です。以下は造成工事業者への見積もり事例に基づく一般的な目安です(実際の費用は地盤状況・現場条件・時期により変動するため、必ず複数社から見積もりを取得してください)。
| 工事内容 | 費用目安 |
|---|---|
| 切土(土を削る) | 5,000〜10,000円/㎥ |
| 盛土(土を盛る) | 3,000〜8,000円/㎥ |
| 擁壁設置(コンクリート) | 50,000〜150,000円/m² |
| 擁壁設置(間知ブロック) | 30,000〜80,000円/m² |
なお、盛土規制法(旧宅地造成等規制法)の規制区域では、切土で2mを超える崖、盛土で1mを超える崖を生じる工事等に都道府県知事の許可が必要です(国土交通省)。許可申請費用が別途かかる点にも注意しましょう。
計算例
条件
- 土地面積:100㎡
- 高低差:3m
- 擁壁の長さ:10m、高さ:3m
費用
切土:50㎥ × 8,000円 = 400,000円
擁壁:30㎡ × 100,000円 = 3,000,000円
その他(排水等):500,000円
合計:約390万円
費用が高くなるケース
| ケース | 理由 |
|---|---|
| 急傾斜 | 切土量が多い |
| 高低差が大きい | 大規模な擁壁が必要 |
| 地盤が弱い | 地盤改良が必要 |
| アクセスが悪い | 重機の搬入が困難 |
売却相場
価格の目安
傾斜地・崖地は、平坦地より価格が下がります。
| 状況 | 価格目安(平坦地比) |
|---|---|
| 緩傾斜(造成容易) | 70〜90% |
| 中傾斜 | 50〜70% |
| 急傾斜(崖条例対象) | 30〜50% |
| 造成困難 | 10〜30% |
価格に影響する要因
| 要因 | 高くなる | 安くなる |
|---|---|---|
| 傾斜の程度 | 緩い | 急 |
| 擁壁の状態 | 整備済み | 老朽化・未整備 |
| 眺望 | 良好 | なし |
| 立地 | 需要が高い | 郊外 |
| アクセス | 良好 | 悪い |
がけ地補正率(相続税評価の参考値)
国税庁の「財産評価基本通達」では、がけ地を有する宅地の相続税評価にがけ地補正率を定めています(国税庁)。売買価格と直接連動するものではありませんが、価格交渉時の参考指標として活用されています。
| がけ地割合 | 南向き | 東向き | 西向き | 北向き |
|---|---|---|---|---|
| 10%以上〜20%未満 | 0.96 | 0.95 | 0.94 | 0.93 |
| 20%以上〜30%未満 | 0.92 | 0.91 | 0.90 | 0.88 |
| 30%以上〜40%未満 | 0.88 | 0.87 | 0.86 | 0.83 |
| 40%以上〜50%未満 | 0.85 | 0.84 | 0.82 | 0.78 |
| 50%以上 | 0.78 | 0.76 | 0.74 | 0.70 |
※ 南向きの崖は日当たりへの影響が小さいため補正率が高く、北向きは影響が大きいため補正率が低くなります。
造成費用と売却価格の関係
買主は造成費用を考慮して価格を判断します。
計算例
平坦地の相場:2,000万円
造成費用:400万円
傾斜地の適正価格:2,000万円 − 400万円 = 1,600万円
崖条例の影響
崖条例とは
崖の近くに建物を建てる際の制限を定めた条例です。建築基準法では全国統一の崖規制がないため、各自治体が独自の条例で規制しています。
東京都の崖条例(建築安全条例第6条)
東京都では、東京都建築安全条例第6条で以下のように定めています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象となる崖 | 高さ2mを超え、勾配30度を超える斜面 |
| 建築制限区域 | 崖の下端から水平距離で崖の高さの2倍以内 |
| 義務 | 高さ2mを超える擁壁の設置(排水措置を含む) |
例
崖の高さ:5m
建築制限区域:崖の下端から10m以内
→ この範囲内に建築するには擁壁の設置が必要
自治体ごとの違いに注意
崖条例の内容は自治体によって異なります。東京都内でも、23区(世田谷区・港区等)は東京都建築安全条例が適用されますが、町田市のように独自の上乗せ条例を持つ自治体もあります。
| 自治体 | 根拠 | 崖の高さ基準 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 東京都(23区共通) | 建築安全条例第6条 | 2m超 | 崖高の2倍以内で擁壁義務 |
| 町田市 | 独自の斜面地条例 | 高低差3m超 | 共同住宅等に階数制限を追加 |
| 神奈川県 | 建築基準条例 | 3m超 | 東京都より基準が緩い |
重要なのは、同じ東京都内でも特定行政庁ごとに運用解釈が異なる点です。擁壁の安全性判断基準や緩和条件の適用が自治体ごとに違うため、必ず物件所在地の自治体に確認しましょう。
売却への影響
崖条例により、建築可能な範囲が限られます。詳しくは「崖条例とは?」をご覧ください。
- 有効宅地面積が減少
- 造成費用が増加
- 売却価格が下落

売却方法
どの方法を選ぶべきか
以下のフローチャートを参考に、ご自身の状況に合った売却方法を判断できます。
方法1:そのまま売却
傾斜地のまま売却する方法です。
ポイント
- 造成費用を考慮した価格設定
- 眺望などメリットをアピール
- 買主が限られる
方法2:造成してから売却
造成して平坦地にしてから売却する方法です。
メリット
- 高く売れる可能性
- 買主が増える
デメリット
- 造成費用がかかる
- 費用対効果の検討が必要
方法3:買取業者への売却
傾斜地・崖地を専門に扱う買取業者に売却します。
メリット
- 確実に売却できる
- 現況のまま売却
- 造成の手間なし
注意点
注意点1:擁壁の状態確認
既存の擁壁がある場合、状態を確認しましょう。
確認ポイント
- ひび割れ、傾き
- 排水機能
- 築年数
注意点2:崖条例の確認
崖条例の内容は自治体によって異なります。必ず確認しましょう。
注意点3:地盤調査
傾斜地は地盤が弱い場合があります。地盤調査の実施を検討しましょう。
まとめ
傾斜地・崖地の売却についてまとめます。
造成費用
- 切土・盛土:数十万〜数百万円
- 擁壁設置:数百万円〜
売却相場
- 緩傾斜:平坦地の70〜90%
- 中傾斜:平坦地の50〜70%
- 急傾斜:平坦地の30〜50%
崖条例の影響
- 建築制限区域の設定
- 擁壁設置義務
- 有効宅地面積の減少
傾斜地・崖地の基本的な仕組みや対処法の全体像は「傾斜地・崖地の売却・買取について」で解説しています。


