農地の売却方法|売れない農地の処分方法
この記事でわかること
Q. 農地は自由に売却できますか?
Q. 農地を売却する方法にはどんなものがありますか?
Q. 売れない農地はどう処分すればいいですか?
農地売却の基礎知識
農地とは
農地とは、耕作の目的に供される土地のことです。農地の買取業者への売却も選択肢の一つです。
農地の種類
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 田 | 水田 |
| 畑 | 畑地、果樹園 |
| 牧草地 | 家畜の放牧地 |
農地売却の制限
農地は農地法により売却が制限されています。
制限の目的
- 農地の減少防止
- 食料自給率の維持
- 農業の保護
農地法の許可
農地を売却するには、原則として農地法の許可が必要です。根拠条文は以下のとおりです。
| 売却先 | 必要な許可 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 農家への売却(農地のまま) | 3条許可 | 農地法第3条(権利移動の制限) |
| 転用して売却 | 5条許可 | 農地法第5条(転用目的の権利移動の制限) |
| 自己所有地を転用のみ | 4条許可 | 農地法第4条(転用の制限) |
条文の詳細はe-Gov法令検索「農地法」で確認できます。許可権者は、3条許可が農業委員会、4条・5条許可が都道府県知事等(指定市町村の区域内は市町村長)です(農林水産省「農地転用許可制度」)。
無許可売買の罰則(農地法第64条)
許可を受けずに農地を売買・転用した場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人は1億円以下の罰金)が科されます。また、無許可の契約は効力を生じないため、所有権移転登記ができず、売主に固定資産税の納税義務が残ります。
農地売却の方法
方法1:農家への売却(3条許可)
農地のまま、農家または新規就農者に売却する方法です(農地法第3条)。
許可の主な要件
- 買主が取得後の農地すべてを効率的に利用して耕作する見込みがあること(全部効率利用要件)
- 買主または世帯員が農作業に常時従事すること(農作業常時従事要件)
- 周辺地域の農地利用に支障を生じないこと(地域調和要件)
かつて「50アール以上(北海道は2ヘクタール)」の下限面積要件がありましたが、2023年4月1日施行の改正農地法で撤廃されました(農林水産省・改正農地法の概要)。これにより、小規模農地の承継・新規就農者への売却がしやすくなっています。
流れ
- 買主(農家または新規就農者)を探す
- 農業委員会に許可申請
- 許可取得
- 売買契約・所有権移転
メリット
- 農地のまま売却可能
- 転用に比べて許可が取りやすい
デメリット
- 買主が農家に限られる
- 価格が安い傾向
方法2:転用して売却(5条許可)
農地を宅地などに転用する目的で、転用予定者に売却する方法です(農地法第5条)。
条件
- 転用目的が明確で、転用後の利用計画に確実性があること
- 資金計画・関係権利者の同意など、転用の見込みが立っていること
- 農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地でないこと(原則不許可)
- 市街化調整区域でないこと(該当する場合は別途、都市計画法第29条の開発許可が必要)
流れ
- 転用可否の調査
- 買主を探す
- 農業委員会に許可申請
- 許可取得
- 売買契約・所有権移転
メリット
- 宅地として高く売れる可能性
- 買主の幅が広がる
デメリット
- 許可が取れない場合がある
- 手続きが複雑
- 時間がかかる
方法3:農地中間管理機構への売却
農地中間管理機構(農地バンク)に売却する方法です。
概要
- 都道府県が設置する公的機関
- 農地の集積・集約を推進
メリット
- 買主を探す必要がない
- 適正価格での取引
- 公的機関で安心
デメリット
- 価格が安い傾向
- 審査がある
農地の区分と転用可否
農地の区分
農地は立地条件によって以下のように区分され、転用の可否が決まります(農林水産省「農地転用許可制度」)。
| 区分 | 特徴 | 転用可否 |
|---|---|---|
| 農用地区域内農地 | 市町村が定める農業振興地域整備計画の農用地区域内 | 原則不可(農振除外手続きが必要) |
| 甲種農地 | 市街化調整区域内の特に良好な営農条件を備える農地 | 原則不可 |
| 第1種農地 | 10ヘクタール以上の集団農地、土地改良事業対象農地等 | 原則不可 |
| 第2種農地 | 駅から500m以内等、市街地化が見込まれる農地 | 他に立地困難な場合に限り許可 |
| 第3種農地 | 駅から300m以内等、市街地区域内の農地 | 原則許可 |
農用地区域内農地を転用する場合は、先に市町村への農振除外申出が必要です。除外手続きには一般的に6か月〜1年程度を要します。
市街化区域の農地
市街化区域内の農地は、届出のみで転用可能です。
流れ
- 農業委員会に届出
- 届出受理
- 売買契約・所有権移転
農地の価格相場
価格の目安
農地の価格は、地域や用途によって大きく異なります。
| 種類 | 価格目安(坪単価) |
|---|---|
| 都市近郊の農地 | 5〜20万円 |
| 地方の農地 | 1〜5万円 |
| 山間部の農地 | 0.1〜1万円 |
転用後の価格
転用許可が取れれば、宅地としての価格で売却できます。
転用前(農地):坪5万円
転用後(宅地):坪30万円
売れない農地の対処法
対処法1:農地中間管理機構
農地バンクに売却または貸し出しを検討します。
対処法2:相続放棄
相続前であれば、相続放棄を検討します。
対処法3:相続土地国庫帰属制度
相続した農地を国に引き取ってもらう制度です(法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」、2023年4月27日施行)。
主な条件
- 相続または遺贈(相続人に対する遺贈)で取得した土地であること
- 建物が存在しないこと
- 担保権・使用収益権が設定されていないこと
- 境界が明らかで所有権の争いがないこと
- 審査手数料(土地1筆につき14,000円)・負担金の支払い
負担金の目安(法務省「相続土地国庫帰属制度の負担金」)
- 宅地・農地・森林以外: 原則として1筆あたり20万円
- 農用地区域内の農地、市街化区域内の宅地等: 面積に応じて算定(数十万〜百万円超になる場合あり)
負担金は10年分の標準的な管理費用相当額として算出されます。法務省の自動計算シートで試算できます。
対処法4:無償譲渡
買い手がいない場合は、無償譲渡を検討します。
メリット
- 固定資産税の負担がなくなる
- 管理の手間がなくなる
農地売却の注意点
注意点1:許可の取得
農地法の許可なく売買すると、契約は効力を生じません(農地法第3条第6項・第5条第3項)。所有権移転登記もできず、売主に固定資産税の納税義務が残ります。前述のとおり第64条で罰則も定められています。
注意点2:税金
農地売却で譲渡益が出ると譲渡所得税・住民税がかかります。一定の要件を満たす場合、租税特別措置法に基づく特別控除が適用されます(国税庁「農地などを収用交換等により譲渡した場合の課税の特例」)。
| 特例 | 控除額 | 根拠条文 |
|---|---|---|
| 農業委員会の斡旋等による認定農業者への譲渡 | 800万円 | 租税特別措置法第34条の3 |
| 農地中間管理機構・農地利用集積円滑化団体への譲渡 | 800万円 | 租税特別措置法第34条の3 |
| 農業経営基盤強化促進法に基づく買入協議等による譲渡 | 1,500万円 | 租税特別措置法第34条の2 |
| 特例農用地利用規程に基づく買取り | 2,000万円 | 租税特別措置法第34条の2 |
特例の適用には農業委員会等の証明書類が必要です。詳細は税理士または所轄税務署へご確認ください。
注意点3:地目変更
転用後は、不動産登記法第37条に基づき、土地の地目変更登記(1か月以内)が必要です。
まとめ
農地の売却についてまとめます。
売却方法
- 農家への売却(3条許可)
- 転用して売却(5条許可)
- 農地中間管理機構への売却
転用可否
- 農地の区分によって異なる
- 市街化区域は届出のみで可能
- 農振農用地は原則不可
売れない場合の対処法
- 農地中間管理機構
- 相続放棄
- 国庫帰属制度
- 無償譲渡
農地転用の条件と手続きの詳細は「農地転用と売却」をご覧ください。農地の買取相場や農地法の仕組みは「農地の買取・売却」で解説しています。


